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2023年3月

アポロ13号は地球そのものだ2023.3.6

アポロ13号は地球そのものだ

室山哲也(日本科学技術ジャーナリスト会議JASTJ会長)

 

「アポロ13」という映画をご存じだろうか。ロンハワード監督が、実際に起きた出来事をもとに作った傑作だ。

アルテミス計画で、再び月を目指す今、私は、ある出来事を思い出す。アポロ計画は、米ソの熾烈な宇宙開発競争に打ち勝つために、アメリカが行った「月に人間を送り込む」巨大プロジェクト。計画の途上で、その事故が起きた。1970年4月11日に打ち上げられたアポロ13号は、月に向かう途上、司令船の酸素タンクが爆発するという前代未聞の事態に直面し、乗組員の生命が深刻な危険にさらされた。アメリカは既にアポロ11号で、人類史上初の有人月面着陸を成し遂げており、その直後のこの事故に、強い衝撃を受けた。

その意味では、この事故は、アメリカの宇宙開発の汚点かもしれない。しかし私は、アポロ11号よりも、13号こそが、アメリカの宇宙開発の底力を示す「快挙」ではないかと思う。

映画の終わりに「アポロ13号は栄光の失敗だ」という言葉が出るが、同感だ。アポロ13号が、地球に帰還する、試行錯誤の物語には、現代に生きる我々への深いメッセージが秘められているように思う。

事故直後の写真を見ると、機体に大きな穴があき、ただならぬ被害と分かる。この状態では月面への着陸どころか、地球帰還すら不可能。結局、月面着陸を諦め、月の軌道を回った後、6日後に、なんとか地球帰還を遂げるが、そのプロセスは想像を絶する苦闘となった。船内は、電力低下、極端な室温低下、酸素欠乏、二酸化炭素増加など、呼吸もままならない、最悪の状況に陥っていた。

この危機をどのように克服したのか。

NASAのチームは、まず地上にアポロ13号と同じ環境の部屋を再現。そして乗組員との交信の中で、船内にどのような物が残っているか、どれが使用可能か、克明なリストを作る。検証は、普通なら見落としてしまいそうな、ゴムホース、ひも、ビニールテープ、靴下にまでおよんだ。そして船内で次々に起きるトラブル(温度低下や電力低下、二酸化炭素上昇など)に対して、地上で実験を繰り返し、解決策をアポロの乗組員に伝えた。乗組員はその方法を船内で実践し、課題を一つ一つ解決していった。

手作りの装置で、船内はまるでパッチワークのような状態になったが、見てくれはとにかく、人間が生存できる環境が、かろうじて作られ、危機を一つ一つ乗り越え、アポロ13号は、ついに地球帰還を果たすことが出来た。

私はこのシーンを見て、この宇宙船は、今私達が暮らしている地球と、よく似ていると感じた。

気候変動が進行し、牙をむき始めた地球環境の中で、人類は限られた資源と知恵をつかって生き延びていかなければならない。そして、サバイバル技術と運用する人間のチームワークがその成否のカギとなる。

この状況は、アポロ13号と同じではないか。

人類は、地球を捨てることは出来ない。この星の上にある、限られた資源や物質を使い、知恵を働かせて環境を守るシステムを作り、80億人の人類が、生き延びる環境をつくるしか道はないのだ。

その意味で、知恵と勇気と協力で、見事に危機を乗り越え、生還を果たしたアポロ13号は私達人類のモデルケースといっても良いかも知れない。

一度あなたも、アポロ13号の映画(本)をごらんになって、地球について考えてみてはいかがだろうか。

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