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2023年1月

「80億人時代の地球の在り方とは?」2023.1.16

「80億人時代の地球の在り方とは?」室山哲也(日本科学技術ジャーナリスト会議JASTJ会長)

昨年11月、世界の人口が80億人を突破した。

このままでは、15年後には90億人、2058年には100億人になるという。驚くことに、現在の地球上の大型動物の重さは1億トンだが、人間は3億トンにも上る。まさに「地球は満員」状態だ。

いったいいつからこうなったのだろう?

5万年前、人類の平均寿命は10年ほどだが、今よりはるかに多くの子供を産んでいた。しかし、人口はわずかに増える程度だった。その後、農耕が始まり、食糧が確保しやすくなり、人口が増え始めた。紀元前8000年ころで500万人、1世紀ごろで3億人、19世紀初頭で10億人、そして20世紀に入って急増をはじめ、1960年には30億人、1987年には50億人、2010年には70億人を超え、ついに国連は、去年11月15日「80億人突破」の報告をするに至った。

この、人口急増の背景には、産業革命で生産性が向上し、医療技術の進歩が寿命を延ばしたことがある。それ自体はおめでたいことだが、人口の急増によって、自然が破壊されたり、環境が汚染されるなど、地球規模の環境問題が発生し続けている。世界が直面している「森林の消滅」「生物種の減少」「エネルギー不足」「食料不足」「地球温暖化」などは、急増する人口増加に対して、地球環境が耐え切れない状態になっているわけで、このアンバランスを、何らかの方法で解決しなければならない。

ではどうすればいいのか?

人類の人口を減少させるのが一番だが、それが当面難しければ、地球と人間活動の関係を変えるしかない。つまり、科学技術を使ってイノベーションを進め、地球の資源を浪費せず、環境を汚さず、できるだけ地球に負荷をかけない文明を作り上げる必要がある。最近叫ばれているSDGsは、それを実行するための方策だが、やってみると実現には様々な壁がある。

代表的なものの一つが、「格差」の問題だ。世界の人口増加のうち、急増が目立つのは、アジアやアフリカなど開発途上の国が多い。中国とインドの人口は、共に14億人を超え、特にアフリカでは、2050年までに、人口が、今の2倍以上に増加すると言われている。そしてそれらの国々には「貧困」という苦難が立ちはだかり、深刻な健康被害と、社会不安をもたらしている。

世界では今、10人に1人、8億2800万人が飢餓に苦しんでいるが、安全な飲料水が手に入らない人が22億人存在し、毎日、700人以上の子供が不衛生な水が原因で死亡しているという。昨年、エジプトで開かれたCOP27で問題になった、気候変動による被害の背景には、このような実態が横たわっている。

そしてもう一つ。途上国で人口が急増している一方、先進国の一部では、人口が減少し始めている。その典型が日本で、人口減少のみならず、「少子化」「高齢化」が同時進行している状況だ。つまり現在の世界は、人口急増と減少が入り混じりながら、全体として深刻な地球環境問題が進行するという、複雑な状況になっているのだ。この多元方程式をどう解いていくのか?ウクライナ戦争なども含めて、2023年は、人類社会の未来を決める、重要な年となりそうだ。

 

(日刊自動車新聞2023/1./16掲載)

 

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