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「どう実現?自動運転社会」2022.7.4

自動運転は、社会を大きく変える力を持っている。

「交通事故の97%はドライバーの運転ミス」といわれるが、自動運転社会になれば、事故が大幅に減少し、渋滞が緩和し、エネルギーや環境問題の解決や、高齢者の自立が進むと期待されている。

また、CASE(通信、自動化、シェア+サービス、電動化)と連動して、社会にDXを引き起こし、私達の生活は革命的に変わるだろう。

しかし一方で、克服すべき課題もわかってきた。

それは自動運転(AI)と人間との関係だ。

自動運転のレベルは5つに分類される。

レベル1は、自動車の縦方向と横方向の動きのひとつを自動化したもの(自動追尾など)、レベル2は二つを自動化したもの(車線変更後の追い越しなど)だ。これらは、むしろ「運転支援技術」と呼ぶべきだが、もし運転主体のドライバーが事故を起こせば、責任はドライバーがとることになる。

しかし、レベル3以降は、運転主体が、基本的にシステム(AI)なので、様々な課題が現れてくる。

そのひとつが「法律上の問題」だ。

たとえば、システムが操縦中の事故責任は、どうなるのだろうか?

自動車を製造したメーカーの責任か、車を所有しているドライバーの責任なのだろうか?

さらに複雑な状況を想像してみよう。

自動運転車が、ナビに導かれて場所を認識し、道路の白線などをトレースしながら走行している場合、白線が消えていたり、捨てられたゴミで白線が見えなかったり、ナビの更新が不備で、変化した道路状況に対応できず起きた事故の場合は、どうなるのだろうか?

責任の所在をめぐる主体が、メーカー、所有者、道路の管理者、ナビの更新責任者、ゴミを捨てた人などと、どんどん増加し、状況が複雑化していく。

残念なことに、これらに対応する法律は、まだ整備されていない。

私はこれらの事例を考えるとき「AIと人間の関係」という問題を、あらかじめ考える必要があると思う。

当然のことながら、自動運転車のシステム(AI)は、法律を守るように設計されているので、法定速度をオーバーすることはない。

しかし人間はそうではない。法定速度40キロの道路でも、(よくないことではあるが)全体の道路事情によっては、スピードを増減させ、柔軟かつ、臨機応変な走行をしているのが現状だ。

以前、こんな興味深いニュースがあった。

アメリカのある町の道路で、あまりにも渋滞がひどいので、警察官が、先頭を走る車を捕まえたところ、法定速度で(のろのろと)走るグーグルカーだったというのだ。

繰り返すが、自動運転車は、速度オーバーをしない。完全な自動運転社会となれば、おそらく道路上の車は、整然と流れ、渋滞のトラブルもなくなるのかもしれない。しかし、そのような社会になる前には「自動運転車と人間が運転する車が混在する」長い期間が続く。ゆるゆると走る自動運転車にイラついたドライバーが、突然割り込みをしたり、追い抜きをすると、かえって道路は混雑したり、事故につながる可能性もある。

人間は、気まぐれで、予想外の行動をとる生き物だ。

こんなアンケートがある(インターリスク総研2016)。

「公道実験中の自動運転車に出会ったらあなたはどうしますか?」

という問いに、「近づかない」という答えが41.9%と多かったが、「追走してみる」「接近して観察」「ちょっかいを出す」という答えが、なんとあわせて38.7%にも上った。これらは、どれも人間の好奇心から出たものだが、AIから見たら不謹慎きわまる答えだろう。AIに言わせると、「事故の原因になるからやめろ」と言ってくるかもしれない。

しかし、このアンケートの答えは、本当に不謹慎なのだろうか?

私はそうは思わない。この好奇心こそ、人間の最も重要な特性であり、科学や文明を進めてきた源泉だからだ。

人間とは、好奇心に満ちた、予測不能な、愛すべき生き物なのだ。

まじめな読者からは、お叱りがあるかもしれないが、私は、自動運転社会を、真に豊かなものにするためには、この人間の特性を認め、人間中心のシステムを目指す必要があると考える。

今後の自動運転の技術開発が、単に技術のみでなく、人間の心理や行動を深く理解し、融合しながら、本当の意味で、人間が幸せに暮らせる社会につながるものであることを望みたい。

室山哲也(日本科学技術ジャーナリスト会議会長:日刊自動車新聞2022..4掲載)

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