« ウクライナ戦争での情報操作について2022.4.8 | トップページ | 沖縄の思い出2022.5.14 »

「自然エネルギーと安全保障」2022.5.2

「自然エネルギーと安全保障」
室山哲也(日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)会長)
ウクライナ戦争の各国の駆け引きを見ていると、安全保障にとって、エネルギーがどれほど重要かがよくわかる。豊かな天然ガスを持つロシアに対して制裁をかけようにも、その天然ガスに依存していては、交渉の切っ先が鈍ってしまうからだ。今後、安定したエネルギーをどう確保するのか?とりわけ、自前の国産エネルギーをどう育成するかが重要なカギとなる。
日本は資源が乏しく、エネルギーも世界に依存しなければ成り立たない国だと言われる。しかし、東日本大震災による原発事故以来、エネルギーをめぐる様々な議論が起きている。その中に、日本がもともと持っている自然エネルギーのポテンシャルを見直そうという動きがある。
日本は国土が狭い島国で、陸地の広さは世界の61位だ。しかし、実は、海(排他的経済水域(EEZ))を含めると、なんと世界6位の広さの海洋大国なのだという。さらに海が深く、容積では世界4位。そこを巨大なエネルギーの黒潮が流れている。もちろん、その強烈なエネルギーはほとんど利用されてはいない。
この海洋を舞台に、洋上風力発電や、潮流発電、波力発電、温度差発電などを展開し、エネルギーの舞台とする計画が動いている。また日本周辺の海底には、固体状の天然ガス「メタンハイドレート」が眠っており、日本が消費する天然ガスの、100年分に近い量があるという試算もある。
また、日本の地熱エネルギーは、アメリカ、インドネシアに続き世界第3位。森林率は先進国では第3位で、バイオマスの宝庫でもある。
さらに、上空から太陽エネルギーがふり注ぎ、豊富な水資源と、豊かな風力にも恵まれた国なのである。
つまり、日本は自然エネルギーの宝庫なのだ。
CO2を出さず、無尽蔵で、なによりも国産エネルギーなため、安全保障上も頼もしい存在といえる。
2011年の東日本大震災の時のエピソードがある。
ある村が津波で壊滅し、夜は暗黒の世界となった。ところが、ある家だけが不思議なことに電気が灯っていた。その主は、かねてから、自宅で小水力発電をしていた老人だった。
「電気はいっぱいあるのに変な人だねえ」と、人々は、奇異な目で見ていた。しかしその家が、災害後、希望の砦となった。夜の村の一角を照らし、冷蔵庫もつかって、人々は寄り添い、災難を乗り越えたのだという。
もちろん、わずかな電気で、村全体を救うことはできない。
しかし、救援までの数日間、その人たちは、なんとか持ちこたえることが出来た。
このエピソードは、自然エネルギーは、災害時などの緊急時に、しぶとい地域を作り出す、重要なインフラなのだということを示している。
自然エネルギーは不思議だ。
単に電気を作り出すだけでなく、共に生活する地域社会が生み出す財産として、人々の心の絆をつなぎ、地域社会を強靭化する、横糸のような存在ともいえるのではなかろうか。
今後、国際世界は、環境、エネルギー、経済、安全保障を織り交ぜながら、激動期に入っていく。
その中で、日本や地域社会がどのように自立し、持ちこたえていくのかを考えるためにも、自然エネルギーにどう向き合うべきかを、考えていく必要があるのではなかろうか。
(日刊自動車新聞2022年5月2日掲載)

|

« ウクライナ戦争での情報操作について2022.4.8 | トップページ | 沖縄の思い出2022.5.14 »

執筆活動」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ウクライナ戦争での情報操作について2022.4.8 | トップページ | 沖縄の思い出2022.5.14 »