キラリ「地球温暖化 どうする?石炭火力発電」2016.2.24
(アナ)
昨年末COP21で、世界の温暖化対策が決まり、今世紀後半にはCO2ゼロを目指すことになった。ところが日本では、石炭火力発電の建設のニュースが相次いでいる。室山解説委員。どうなってるの?
(むろ)
今後世界各国はCO2ゼロを目指さなければならない。しかし日本は5年前の原発事故の影響もあり、一時化石燃料による火力発電の割合が9割にのぼる異常事態となった。今度、温暖化対策に向き合いながらいかに化石燃料を減らすのか、特に石炭火力をどう位置付けていくかが問われている。
(アナ)
そもそも日本のCO2削減目標はどのくらい?
(むろ)
「2030年までに-26%(13比)」。「省エネ」(エコカー、省エネ家電、断熱建築など)と「CO2を出さないエネルギー」(再生可能エネルギー、水素、天然ガス、原発など)の2本柱で温暖化対策を進めていくことになる。5年後にはさらに深掘りした数字提出が求められるので、現在の目標は是が非でも達成しなければならない。
(アナ)
具体的にはどう進めていくのか?
(むろ)
「脱CO2エネルギー」の部分では、「電源構成」の議論がある。2030年の電源構成は、「石炭26%/天然ガス27%/(石油3)/原発20-22%/再生エネ22-24%」という数字がきまっている。化石燃料も現在より比率が少なく、原発も事故前よりは減っているが、今後に向けてという視点からは課題が2つある。
1つ目は、「原発比率20-22%」の評価。原発ゼロの世論がある中、そもそも数字が高すぎるという批判がある。また40年寿命ルールでいくと、すべての原発が再稼働しても15%程度で、寿命延長も織り込んでいることへの批判もある。再稼働をめぐる現状を見たとき、そもそもこのような数字が実現可能なのか?今後に課題が残る。
2つ目は「石炭火力発電26%」の評価。化石燃料の中でもCO2排出が多い石炭火力は、COP21の議論でも批判が多く、今後世界は脱石炭発電の方向でいくべきだという意見が多くみられた。結果的に、日本が逆行している形となっている。石炭は燃料コストが安く、オーストラリアなどから輸入も安定的に行えるので、産業から見ると都合がいい燃料。また4月以降の電力自由化を控え、日本ではむしろ石炭発電の新規申請が相次いでいる。
環境省の試算では、石炭火力によるCO2排出量が、今後2013年の2.7億トンから、2.2-2.3億トン(2030年)にまで減らさなければならないが、現状の申請分が、全て稼働したら、CO2は2.8-2.9億トン(2030年)まで増加、6000万トンの超過となってしまう。
(アナ)
6000万トンをどう削減するのか?
(むろ)
業界の自主取り組みとともに、政府は規制を強化し、発電効率を上げる対策を打とうとしている。日本には今、超々臨界発電5割、その他効率が悪い発電タイプが5割あるが、「高圧」「高熱」で効率が高い超々臨界発電の比率を増やし、CO2削減をする計画。また超々臨界発電を国際展開すれば世界の温暖化対策にも寄与できる(仮に米中インドに適用すると、1年15億トンCO2削減となり、日本排出量14億トンを上回る温暖化対策となる)として、セットで進める計画。しかし超々臨界発電ですら、従来火力発電の2倍のCO2排出がある。今後は「IGCC」(ガス化と水蒸気発電の組み合わせ)「IGFC」(さらに燃料電池も組み合わせる)など、次世代の開発も必要で、ある意味、技術的重圧が大きくのしかかってくる構造となっている。
(アナ)
こんなことで、温暖化を食い止めることができるのか?
(むろ)
個人的には心配している。何とか2030年目標をクリアしてほしいが、そのあとは「今世紀後半にCO2ゼロ」の目標にどうつなぐかが課題。石炭火力は建設10年、稼働40年(30年から50年)といわれ、今世紀後半にも、日本は石炭火力を焚いていることになる。
今後は化石燃料ではCO2が少ない「ガス火力発電」を進め、「再生可能エネルギー」をもっと拡大するシナリオが必要。また「省エネ」は必須で、私たち市民意識も変えていかなければならない。
(アナ)ありがとう。
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