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時論「太陽系を越えて ボイジャーが残したもの」2013.9.20

ボイジャー太陽圏通過

「惑星探査機ボイジャー」と聞いて、懐かしい気持がした人は、ある程度お年を召した方でしょう。「はじめて聞いた」という人はまだ若いかもしれません。ボイジャーは36年前に打ち上げられた、アメリカの宇宙探査機です。1号2号と、打ち上げられた後、太陽系の外側に向かって飛行を続け、ついに1号が太陽系を脱出したと、先週アメリカのNASAが発表しました。ボイジャー1号は、今、「太陽圏」つまり太陽から吹く太陽風が弱まり、外側の星の影響が増える空間に突入しています。NASAのHPを見ると、現在、ボイジャー1号は地球から190億キロメートル。2号は150?億キロメートルの地点を、秒速17キロ。ピストルの弾の30倍以上の猛スピードで遠ざかっています。ボイジャーは、人類が作った人工物で、太陽系を脱出したはじめての物体です。今夜は、惑星探査機ボイジャーが成し遂げた、成果と意義について考えます。

ボイジャーとはどういう探査機か?

1977年、ボイジャーは2号、1号の順番で打ち上げられ、長い宇宙の旅に出ました。当時のアメリカは、ベトナム戦争の疲弊感が残る中、アポロ計画などによって、宇宙への関心が高まる時代を迎えていました。ボイジャーは、2台のカメラといくつものセンサーを搭載し、惑星の姿を観測して、太陽系の進化のなぞを解く任務を負っていました。実は、当時、宇宙探査は、せいぜい火星、金星が限度で、太陽系の端まで行くなど、不可能と思われていました。距離が遠すぎて、探査機自体も耐えられないだろうというのです。ところがボイジャーは、それをやってのけました。なぜでしょうか?きっかけは、ある研究者の論文でした。惑星地図を作っていたところ、1970年代後半に起きる、不思議な現象に気付きました。普通、太陽系の惑星は、公転の周期がそれぞれ違うため、バラバラの位置にいます。ところが、1970年代後半に、ほぼ同じ方向に並ぶというのです。およそ180年に一度のチャンスです。このタイミングを利用すれば、同じ探査機で多くの惑星を回ることができます。さらに、燃料節約のために、惑星の引力を利用して加速する「スイングバイ」という、特別な航法を使えば、なんと海王星まで12年で行けることが分かったのです。

ボイジャーが発見した太陽系の謎

さて、その後、ボイジャーは、驚くべき成果を次々と上げていきました。これは当時、地上の望遠鏡で撮影された木星です。縞模様がぼんやりと見えます。ところがボイジャーが撮影した木星は、まるで生き物のような圧倒的な迫力がありました。帯状のガスが渦を巻き、巨大な斑点は、地球がすっぽり入る大きさでした。連続写真を撮ってみると、木星の表面は、ガスが激しく動き、大きな斑点の周りでは、秒速100m以上の風が吹いていました。

これは地上から撮影された土星です。輪は2本。しかし、ボイジャーの写真を見ると、土星の輪は、1000本以上の輪の集合だということがわかりました。分析の結果、近づいた天体が砕けてできた氷の粒が集まったものだということも分かりました。

ボイジャーは、私たちの宇宙観に、どのような影響を与えたのでしょうか?ボイジャーの大きな発見の一つに、太陽系のいくつもの惑星に「輪」を見つけたことがあります。これは、おなじみ「土星の輪」。これは木星の輪。地球からは見えないくらい薄く、細かいチリでできています。これは天王星に見つかった輪。木星の輪に近い形をしています。この発見は、太陽系の惑星が、何か、統一的な物理法則に支配されていることを示しています。そして「比較惑星学」という新しい学問を生みだすきっかけにもなりました。地球も宇宙の一部であり、ほかの惑星と比較すれば、地球をさらに深く理解できるという考え方です。ボイジャーの発見は、私たちのモノの見方を大きく広げてくれました。

1985年、天王星に接近したボイジャーが撮影した画像です。表面からの光の波長を色分けすると、奇妙なことがわかります。「赤」の部分が極ですが、天王星は極地を太陽に向けて自転していたのです。ふつう惑星は、太陽の周りをまわる公転に対して、自転軸は、縦方向になっています。ところが天王星は、90度も自転軸がずれているのです。いったい何が起きたのか?研究の結果、かつて惑星ほどの巨大な天体が、天王星に衝突し、その結果、横に倒れた形で自転を続けていたことが分かりました。

この、途方もないドラマは、天体衝突が、遠い世界の話ではなく、私たち太陽系の内部にまで、深く及んでいることを示しています。

驚くべき発見は、木星でもありました。これは、木星の衛星イオの写真です。上空に何か白いものが見えます。最初研究者たちは、後ろの別の衛星が写っているのかと思いました。しかし分析の結果、イオの内部のマグマが、木星の引力によって噴き出している、火山活動だということがわかりました。人類が、地球以外で見つけた、初めての火山活動です。噴煙は、イオの8か所、高さは地球の噴煙の10倍、270キロメートルにも及ぶものがありました。実はそれまで、科学者たちは、衛星の環境は、ひっそりとした静寂の世界だと思っていました。太陽エネルギーが地球のわずか1/25という、木星の氷つくような世界で、このようなダイナミックな現象が起きていることは大きな衝撃でした。宇宙は、常に変化するエネルギーに満ちた場所だということを再認識したのです。。

人類にとってのボイジャーの意味

さて、ボイジャーは、太陽系をすすむとき、いつも進行方向にカメラを向けて撮影してきました。しかし、海王星を通過した後、一度だけ太陽や地球の方向に振り向いたことがあります。これがその時の写真です。漆黒の宇宙空間に、わずかな光の点。太陽系のかなたから撮影した、私たちの星「地球」です。70億人以上の人類と、3000万種ともいわれる生物が、寄り添って生きている舞台。私たちのふるさとです。その姿はあまりにも小さく、美しいものでした。ボイジャーに搭載されている「ゴールデンレコード」という金板。その中には、地球の音、動物の鳴き声、55種類の人々のあいさつが収録されています。そして、112枚の写真には、地球の風景、食べ物、私たち人間の姿が収められています。

まとめ

ボイジャーは、なぜ、長い宇宙の旅を続けているのでしょうか?

地球とはなにか?人間とは何かという根源的な問いに迫るため、私たち人類の本能がそうさせているのでしょうか。ゴールデンレコードの作者、フランクドレイク博士は、「いつか地球が消滅したのち、宇宙のどこかの知的生命体に、人類が生きた証を伝えるのだ」と説明しています。ボイジャーは、その意味で、私たち人類の姿を映す鏡のような存在なのかもしれません。ボイジャーの電源の寿命は、少なくとも、あと7年。その後、データを送信する力は失いますが、宇宙の旅は続き、次の恒星には、今から4万年後に到達する予定です。その時、人類社会は、どのような姿をしているのでしょうか?

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