« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »

2012年5月

キラリ「地球の水は大丈夫?~水観測衛星しずくの挑戦」2012.5.18

(アナ)

5/18(金)、日本のH2Aロケットで水循環変動観測衛星「しずく」が打ち上げられた。この衛星は、地球全体の雲や雨など地球の水の動きを観測する、日本初の本格的「水」観測衛星。室山解説委員。水循環って何?

(むろ)

地球は水の惑星。水は海、川、雲、雨、氷などに姿を変え、環境全体と生物に影響を与えている。「水を知ることは地球を知ること」。「しずく」は極軌道(南北に回る)を描き、700キロの上空から、地球の水の状況を観測するが、2日間で地球のほとんどを調べることが出来る。

いままで、欧米の水観測衛星は色々あった。「しずく」は日本の衛星で、自前観測できることになり、期待できそう。

(アナ)

どんなことが出来る?

(むろ)

たとえば土地の水分を観測できる。これはオーストラリアの土地の水分の変化だが、衛星を使えば、一気にその状況が把握でき、農業などにも利用可能。しずくを使えば、日本でも同じことが出来ると期待されている。

漁業にも応用できる。日本近辺の海水温度と魚場の関連をみると、魚の種類によって居場所が違うことが分かる。魚の居場所は暖かい水と冷たい水の坂井とか、温かい水の渦とかと関係があり、海の状況を読んで、効率的な漁業に利用することが出来る。燃料も節約できるし、魚の値段にも影響があるかもしれない。

船舶の安全にも利用できる。北海道近辺の海を可視光で見ても雲が邪魔をすることがあるが、しずく搭載のマイクロ波でみれば、雲を通して海氷の様子を把握でき、海難事故を防げる。

北極の氷分布もわかる。北極の氷は、地球温暖化で小さくなっているが、その状況を観測して地球全体の気候や気象への影響を研究できる。また生まれつつある北極航路を安全に航行するにも、衛星データは欠かせない。

(アナ)

今後どうなる?

(むろ)

温暖化で地球の水循環に変化が出るかもしれないという研究がある。温暖化対策を取らずにいると、今後100年で、熱帯の海や中高緯度では、雨や洪水が増加。亜熱帯では乾燥地帯が増えるのではないかという研究がある。今後観測衛星で、実際どうなるかを注意深く観測する必要がある。しずくは、水についての色々な要素を同時観測できる能力を持っているので、今後ますます期待できる。世界と連動して継続的に観測を続けてもらいたい。調整後(1年後?)には、インターネットでしずくのデータにもアクセスできるようなので楽しみだ。

(アナ)

ありがとう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「科学って面白い!科学技術映像祭入選作品から」5月27日16.00-Eテレ

科学技術映像祭入選作品から「風レンズ風車」のドキュメントを紹介。解説します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ニュース深読み「宇宙ビジネス」5月26(金)8.45-9.30生放送

H2Aロケットが韓国の衛星を受注して打ち上げ4たことで、宇宙ビジネスに注目が集まっています。一体どんなになっているのか?ぶっちゃけトーク生放送です。(ゲストやくみつるさんほか)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

くらし解説「地球の水は大丈夫?」(生放送)5/25(金)10.05-10.15

5/18にH2Aロケットで打ち上げられた、日本初の地球水観測衛星「しずく」のすごい性能について解説します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

時論公論「衛星打ち上げビジネスの課題」2012.5.18

●リード

今日未明、国産ロケットH2A21号機が打ち上げられ、成功しました。連続15回目の成功で、成功率では、世界のロケットと肩を並べるまでになりました。今回の特徴は、日本が初めて、外国から打ち上げを受注した、衛星を乗せたことです。その意味で、日本の宇宙開発の新しいページが開いた日といえます。今夜は、日本の衛星打ち上げビジネスの現状と今後の課題について、考えてみたいと思います。

●H2Aロケット21号機とは

H2A21号機は、全長57m。合計4トンの衛星を、高度36000キロの静止軌道に打ち上げる能力があります。今回は、大型の水観測衛星「しずく」、小型衛星2機のほかに、地上の地形や建物の様子を観測する、韓国の多目的実用衛星が搭載されました。打ち上げられた衛星は、それぞれすでに、所定の軌道に入っています。H2Aは、2001年、宇宙航空研究開発機構JAXAによって最初の打ち上げが行われ、13回目の2007年から、三菱重工が中心となった民間企業が、ロケットの製造と打ち上げを行っています。

●なぜロケットビジネスか

日本は、なぜ民営化をめざすのでしょうか?ロケットは、巨大で複雑なシステムで、技術開発や産業への大きな波及効果があります。H2Aの技術を民間企業が引き継げば、習得した巨大技術のノウハウを、プラントや高速鉄道など、ほかの技術に応用して、産業活性化につなげることができます。国の側から見ると、予算不足の中、民営化で作りだしたお金と人材を、より先進的で多彩な宇宙開発、例えば、日々の天気をより詳しく伝える新型気象衛星や、災害時に役立つ地球観測衛星などの開発に投入することが出来ます。また、民間企業と協力して、国産ロケットを維持すれば、日本が必要な衛星を、必要な時に打ち上げることが出来るため、国民生活に密着した宇宙開発を展開できます。

宇宙開発の民営化は、世界的にも進んでおり、とくに欧州、少し形は違いますがロシア、最近ではアメリカも、民間宇宙ビジネスを強力に推進しています。

しかし、実際には、衛星打ち上げビジネスは苦難の道です。民営化を維持するには、最低、年間4機の衛星を打ち上げ、利益を得る必要があります。日本の政府が作る衛星は、年間1-3機。その衛星は受注できるとしても、残りは外国から受注しなければなりません。

通信衛星や放送衛星など、衛星打ち上げビジネスの対象となる商業衛星の、世界の打ち上げ需要は、毎年およそ20機前後。それを欧州が半分、次にロシア、続いて中国とアメリカが分け合っています。最近では、中国が急速に力をつけており、日本が割り込むのは容易ではありません。

●今後の課題

今後、日本が、衛星打ち上げビジネスを成立させるには、どんな課題があるのでしょうか?

(1)      ロケットの安全性

まず第1に、いつでも確実に打ち上げられる、安定したロケットが必要です。

H2Aと世界の主要ロケットを比較すると、日本の成功率は95%以上と、遜色ありません。しかし、そのロケットが属しているシリーズ全体の打ち上げ総数を見ると、日本は一桁少なく、圧倒的に経験不足です。「ロケットは連続20機打ち上げて一人前」という言葉がありますが、H2Aはやっと大人の仲間入りをしたばかりです。今後、定期的に、数多く打ち上げることで、技術を成熟させていく必要があります。

(2)      コスト

2つ目の課題は、コストの問題です。

ロケット1機当たりの製造、打ち上げコストは、世界の平均が70億円のところ、日本は、およそ90億円と2-3割割高です。また、欧米のロケットは、静止衛星を赤道上空に打ち上げるとき、目的地点までの飛行距離を短くするために、赤道近くに基地を作っていますが、日本の種子島宇宙センターは、赤道から離れているため、打ち上げ後、衛星は、自らの力で赤道上空にまで移動しなければならず、余分な燃料を使ってしまいます。ロケットの経費を少しでもコストダウンするため、三菱重工は、4種類あったH2Aのタイプを、2種類に減らしました。さらに、エンジンをシンプルにし、リハーサルの回数を減らすなどしてきましたが、近年の円高の影響もあり、苦戦が続いています。

今回、韓国の衛星を受注できたことは、確かに快挙ですが、実際は、韓国の衛星とJAXAの衛星の軌道が偶然ほとんど一緒だったため、相乗りしてコストを下げることができた背景があります。この幸運が、今後も続く保証はありません。また、日本のメーカーが、近年、シンガポールやトルコなどから、相次いで2機の通信衛星の製作を受注しましたが、残念ながら、ロケットの打ち上げは、外国に奪われてしまいました。このように、コストの問題は、H2Aにとって最大の課題といえます。

3)ニーズに合ったロケット作り

3つ目の課題は、世界の衛星のニーズに合ったロケットを作る必要があるということです。

世界の通信衛星や放送衛星は、年々、扱う情報量が増え、大型化する傾向にあります。H2Aが対応できる衛星の大きさは4トンですが、近年、それ以上の大きさの衛星が増えてきました。その結果、関係者によると、H2Aが対応できる衛星は、商業衛星全体の1-2割にまで減っているといいます。この状況を打破する一つの方法は、ロケットの打ち上げ能力を高め、搭載できる衛星の数を増やして、衛星一機当たりの打ち上げ料金を下げることです。たとえば、欧州のアリアン5は、H2Aの2倍以上の搭載能力があり、2つの大型衛星を、同時に静止軌道に投入できるため、その分打ち上げ料金を下げることが出来ます。

この状況に対応するために、JAXAは、H2Aの機能を高度化する計画を打ち出しました。衛星を最終的に宇宙に運ぶ、2段目ロケットの性能を高め、より長く飛べるようにし、放出後、衛星が、軌道に入るために使う燃料を、肩代わりしようというのです。

もう一つ計画があります。現在、国際宇宙ステーションへの運搬に使われている、H2Bロケットを、民間移管し、外国の衛星打ち上げにも使おうという計画です。H2Bは、搭載能力が、8トンと大きく、民営化すれば、従来のH2A、改良型H2A、そしてH2Bのラインナップが誕生し、より多くの種類の衛星に対応できる体制ができます。しかしH2Bは、もともと宇宙ステーション用に設計されているため、世界の多様な衛星に対応しにくく、コスト面でも問題があるため、今後民営化するためには十分な検討が必要といえます。

●まとめ

このように、日本の衛星打ち上げビジネスを取り巻く状況は、厳しい状況にあり、これからが正念場といえます。一方、世界の宇宙開発は、今、激しく変化しています。去年夏、アメリカはスペースシャトルを終了させ、国際宇宙ステーションへの民間参入を進め、NASAは月や小惑星、火星など、遠い宇宙を目指すという方針を打ち出しました。欧州やロシア以外にも、中国やインド、そして韓国やブラジルなどの宇宙開発も急速に進んでいます。宇宙開発が、安全保障と産業の両方に結びつきながら、膨大な予算を必要とする現実の中で、民営化の流れは今後も変わりそうもありません。日本は、その流れの中で、日本にとって望ましい宇宙開発の姿を、もう一度探りながら、民営化を進めていく必要があります。今回の打ち上げ成功が、日本の宇宙開発のあるべき姿を、改めて考えるきっかけになるよう、望みたいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

時論公論「衛星打ち上げビジネスの課題」今夜2012.5.18の23.50から10分間生放送

今日未明、国産ロケットH2A21が打ち上げられ無事成功しました。ご存知のように日本で初めて外国から打ち上げを受注した衛星も搭載されていました。そこで今夜「衛星打ち上げビジネスの課題」という解説をします。遅い時間ですが、起きていらしたら、ご覧いただければ嬉しいです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「太陽異変 地球が寒くなる?」2012.5.14

●太陽に何が起きている?

最近、国立天文台が、太陽観測衛星「ひので」の観測結果から、「太陽活動に変動が起きている」と発表。マスコミで各種の報道がなされ、若干の騒ぎになりました。太陽活動の低下は、地球の気温の低下につながるという考えがあり、今後は「温暖化」ではなく「寒冷化」に向かうかもしれないという報道です。いったい何が分かり、何が分かっていないのか?現状をまとめてみたいと思います。

●太陽観測衛星「ひので」の観測結果とは?

近年太陽研究が進歩して、地球からと宇宙からの観測が続いています。2006年には太陽観測衛星「ひので」が打ち上げられ、宇宙空間からの観測で、太陽について、色々なことが分かってきました。太陽は、いわば巨大な磁石で、普通の磁石と同じような形で磁力線が出ています。太陽から出る磁力線は、太陽活動に深く関連しており、磁力線が強いと太陽活動が活発、弱いと太陽活動が弱いという相関があるといわれています。さて、地球と同じように、太陽にも南極と北極があり、それに従った磁力線の分布がありますが、太陽の場合、およそ11年ごとにその2極構造が反転します。現在の太陽の磁場は、北極がマイナス、南極がプラスが続いていました。正常なリズムでは、次はそれが、北極プラス、南極マイナスに逆転するはずでした。ところがひのでの観測で、不思議な状況が見つかりました。ひのでは宇宙空間から太陽の磁場の様子を克明に観測し、南極と北極の磁場分布を、上からのぞいたような形で知ることが出来ます。その結果、2008年-2009年の観測では、予想通り、北極がマイナス(赤)、南極がプラス(青)の分布を示していました。ところが不思議なことに、2011年-2012年では、南極は変化がないのに、北極だけプラスに変化(青が増える)状況が出てきました。もしも、この不規則な状況が続くと、南極北極ともプラスという異常な状態につながってしまうことになります。南極と北極が同時にプラスということになると、磁力線はどうなってしまうか?国立天文台によると、マイナス極が赤道付近にでき、いびつな4重極構造になる可能性もあるといいます。これは、「ひので」による観測で初めて分かったことで、その原因やメカニズム、また、かりに4重極構造になってもそのあと正常の2極に戻るかどうかも分かりません。全く謎に満ちていて、わからないことだらけですが、「太陽に何かが起きている」ことだけは確かです。

●太陽の健康診断をするもう一つの方法

太陽の健康診断をするほかの方法はないのでしょうか?昔からの観測方法に、黒点の数を数える方法があります。黒点は、じつは、太陽の磁力線の出入り口で、黒点の数は、太陽が磁場を作る能力をほぼリアルタイムで表しています。それを使って太陽活動の大きさを知ることが出来るのです。太陽の黒点の数の変化を示したものをみると、太陽の黒点は、およそ11年周期で多くなったり少なくなったりしているのがわかります。黒点が多いと太陽活動は活発、少ないと不活発といわれますが、今までは、黒点が減っても、必ず一定のリズムで黒点が増加に転じ、太陽活動は元に戻っていました。ところが、最近、異変が起きています。通常のリズムでは、御覧のようなカーブで、黒点の増加が予想されるのに、いっこうに増加せず、周期も12.6年にのびました。

●地球が寒冷化したころに似ている?

気になるのは、これと似た状況が過去にあったことです。黒点の数の変化は400年前のガリレオによる観測以来、科学者たちによって調べられてきましたが、最近の傾向(周期ののびなど)が、かつて起きた「マウンダー極小期」とにているというのです。「マウンダー極小期」は、300年前に起きたといわれる寒冷化の時期で、その間は、黒点がほとんどない状況が70-80年続いたのです。当時の資料によると、イギリスのテムズ川が凍結したり、京都も非常に寒くなったという記録があります。このように、当時、局地的には極端に寒くなった地域もありましたが、北半球平均気温からみると、現在より-0.6度、マウンダー極小期の前後からみると-0.1-0.2度寒くなったのではないかとされています。

  

●地球の気温はどうなるのか?

もし、「マウンダー極小期並みの現象」が今後起きたら、地球はどうなるのでしょうか?「温暖化」との関連で見てみると、地球温暖化は、シミュレーションによって、今後100年で、地球の平均気温が1.1度-6.4度上昇するとされています。これと比較すると桁が一つ違い、もしもマウンダー極小期のような現象が起きても、温暖化の構図は変わらないことになります。この結果から、現在のところ、太陽の異変が見つかったからといって、ただちに極端な寒冷化が起き、例えば地球が「氷河期」に入るようなことは起きないだろうと思われます。そういうわけで、今後とも地球温暖化対策は続ける必要がありそうです。ただし、宇宙や地球の気候や気象は、わからないことが多く、今回の太陽の磁場変化についても、本当の状況を正しく把握するためには、あと10年は、きちんと太陽観測を続けないとわからないと国立天文台は説明しています。こんごも、科学的視点を失わず、冷静に研究を続ける必要があるのだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

くらしキラリ解説「太陽異変 地球が寒くなる?」5月8日(火)10.05から生放送

今日はつくばの取材に行ってきました。

竜巻の名残か、やたらに車が多く、忙しそうに走っていました。

それにしてもすごい被害でした。

あす5/8(火)10.05-10.15総合テレビで解説をします。太陽観測衛星などの観測で、太陽の磁場に異変が起きていることが分かりました。黒点の状況などから300年前の寒冷化を引き起こした時期に似ているという意見もあり、どこまでわかっているのか、地球の気温は今後どうなるのかを解説します。難しい話で、多少もやもや感が残るかもしれませんがよろしければご覧ください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

時論公論「加速するか国産旅客機開発」2012.5.2

    リード

日本の長年の夢、国産ジェット旅客機の開発が少しずつ現実味を帯びてきました。50年ぶりの国産旅客機開発ということもあり、日本初の国産ジェット旅客機MRJは、当初の予想通りには計画が進まず、一進一退を繰り返してはいますが、来年中の初飛行に向けた調整に入っています。

日本にとって、国産旅客機の開発は、どのような意味をもつのでしょうか。

今夜は、その現状と、課題について考えます。

    航空機産業が日本を救う?

世界の航空機産業は今、大きく成長しています。世界経済が低成長に苦しむ中でも、アジア太平洋を中心に、世界の旅客機の需要は、今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍もの大きさになるといわれています。

航空機は高度な技術のかたまりで、部品数も、自動車の100倍の300万点もあり、技術的、経済的波及効果が極めて大きいといわれます。そのため、世界各国は、今後、航空機産業を国家の基幹産業と位置付けようとしています。

一方、日本は、「ものつくり大国」として、自動車や電子機器で世界をリードしてきましたが、近年、競争力に陰りが出始め、新しい基幹産業を模索しています。日本の航空機産業は、第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退しました。しかし、その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中で、かろうじて技術をつなぎ、加工技術や、材料技術を育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしています。

    国産機の先兵になれるか?MRJ

これは、三菱航空機が開発を進めている日本初の国産ジェット旅客機MRJです。ふつうジェット機というと、ボーイングなど、座席数が200以上のものを連想しますが、MRJは、座席数も100未満の小型ジェット機です。航続距離はおよそ3300キロで、東京からはグアム、台北(たいほく)、上海、北京をカバーでき、世界各国の大都市の拠点空港と地方空港を結ぶことができます。燃費が良く、室内も広いため、アメリカや香港、そして国内の航空会社から、130機の受注を受けていますが、一般的な採算ラインの、400-500機の受注に向けた努力が、今後求められます。

    今後の課題①「世界に売れる機体つくり」

日本の国産ジェット旅客機は、世界に羽ばたけるのでしょうか。そのためには、多くの課題を乗り越える必要があります。

ひとつ目は、当然ながら「世界に売れる機体でなければならない」ということです。これは世界のジェット旅客機のシェアの変化を示したものです。ジェット機の運航機数は、2010年以降、20年間で、およそ2.1倍に拡大し、大きく成長する市場だということが分かります。大きさ別にみると、座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアは、アメリカのボーイング社と、ヨーロッパのエアバス社が独占しており、今後もその形は変わりそうもありません。そのため、日本は今まで、機体を丸ごと作ることはせず、ボーイングやエアバスの機体の一部を受注してきました。しかし、日本の部品製造レベルは次第に向上し、最新のボーイング787では、全体の35%を占めるまでになりました。一方、中国などの新興国も、部品製造の技術力を高め、日本を激しく追い上げており、日本は、いつまでもこの形に甘んじるわけにはいかない状況にもなっています。

では、中型機、大型機以外はどうでしょうか?

座席数100未満の、小型機ゾーンが、今後、大きく成長することがわかります。MRJは、このゾーンに属します。このゾーンの、今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われ、日本が技術的に安定した国産機を作れれば、成功する可能性は十分あります。

また中型機のゾーンは、ボーイングとエアバスが独占しているとはいうものの、LCCと呼ばれる、低価格で運行サービスを提供する航空会社が、今後多くの機体を必要とするため、巨大な需要が見込め、各メーカーは、このゾーンへの参入に熱い関心を示しています。

さて、MRJが属する小型旅客機のゾーンは、ライバルも多く、既存のカナダのボンバルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本も含めて5陣営が入り乱れる激戦区です。日本は「後発」のため、既存の国に比べれば市場開拓で後れを取っていますが、後発の強み、つまり最新技術を導入して、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れるという優位性もあります。いずれにしても、日本は、小型機の国際市場が固まらないうちに、積極的に食い込む必要があります。3月末、宇宙航空研究開発機構JAXAは、航空機開発のための研究拠点を作り、今まで持っていなかった、実験用ジェット機を購入し、今後行われる、MRJの飛行試験をサポートする体制を整えました。さらにMRJ後の国産旅客機開発に対しても積極的にかかわり、加速する方針を打ち出しました。国産機を丸ごと作るのは、部品製造とは比べ物にならない難しさがあります。機体のすべての部分をすり合わせ、統合していく能力が必要だからです。その意味で、MRJの成功は、そのまま日本の真の技術力の証明につながる意味を持っています。

    課題②「総合的なビジネスモデル」

2つ目の課題は、「総合的なビジネスモデルをどう作るか」ということです。旅客機は、技術的に優れていることはもちろんですが、価格を安くしたり、販売後のサービス体制などの充実がなければ、世界市場で勝ち残れません。

日本は、この点で苦い体験があります。およそ50年前、日本初の国産プロペラ機YS-11を開発した時のことです。YS-11は、当時の技術を結集した、優れた航空機でしたが、利益を生み出す価格設定や、ユーザーへのサポート体制がうまくいかず、182機製造した時点で360億円の赤字となり、生産中止に追い込まれました。

「技術で勝ってビジネスで負けた」。

今もよく言われる日本の弱点が露呈した形となりました。

国産ジェット機MRJは、YS11の教訓を生かして、ボーイング社などノウハウを持つ企業と提携して、整備や、パイロットの教育訓練システムを作るなどのサポート体制を充実する予定ですが、かつての失敗を繰り返さないように、十分な体制をとることを望みたいと思います。

    課題③「司令塔の強化」

3つ目の課題は、開発を進めるうえでの「司令塔」の問題です。同じ空の分野でも、日本の宇宙開発は、2008年に施行された宇宙基本法によって、全体の方向性を決める組織や体制について、議論がはじまっています。しかし、航空機産業では、そのような議論はなく、各省庁がばらばらの形で、かかわっている状況です。航空機産業は、経済、政治、安全保障、生活などが融合した分野で、総合的な戦略が必要です。日本の技術力を結集し、どう世界に向き合うのか?企業を国はどう支えるのか?研究開発はどうあるべきなのか?問題は山積しています。一刻も早く議論を始め、産官学が協力したオールジャパン体制を作り上げる必要があります。

    まとめ

1世紀にはいって、世界は急速にせまくなってきました。アジアを中心として新興国が台頭し、ヒト、モノ、情報の行き気が激しくなり、新しいタイプの旅客機が必要とされています。日本が、経済の空洞化というリスクを乗り越え、再びものつくり大国として輝くためにも、国産旅客機の存在は大きいといえます。課題を一つ一つ解決し、今度こそ、日本の翼が、世界の空に羽ばたくことを、期待したいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

時論公論「加速するか国産旅客機開発」5/2(水)23.50-24.00総合テレビ生放送

YS11以降日本の悲願だった国産旅客機(MRJ)が間もなく世界の空を飛びそうです。日本にとって国産旅客機開発とはどんな意味があるのかを解説します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年4月 | トップページ | 2012年6月 »