« 時論公論「加速するか国産旅客機開発」5/2(水)23.50-24.00総合テレビ生放送 | トップページ | くらしキラリ解説「太陽異変 地球が寒くなる?」5月8日(火)10.05から生放送 »

時論公論「加速するか国産旅客機開発」2012.5.2

    リード

日本の長年の夢、国産ジェット旅客機の開発が少しずつ現実味を帯びてきました。50年ぶりの国産旅客機開発ということもあり、日本初の国産ジェット旅客機MRJは、当初の予想通りには計画が進まず、一進一退を繰り返してはいますが、来年中の初飛行に向けた調整に入っています。

日本にとって、国産旅客機の開発は、どのような意味をもつのでしょうか。

今夜は、その現状と、課題について考えます。

    航空機産業が日本を救う?

世界の航空機産業は今、大きく成長しています。世界経済が低成長に苦しむ中でも、アジア太平洋を中心に、世界の旅客機の需要は、今後20-30年にわたって、平均5%以上拡大し、2030年には2.7倍もの大きさになるといわれています。

航空機は高度な技術のかたまりで、部品数も、自動車の100倍の300万点もあり、技術的、経済的波及効果が極めて大きいといわれます。そのため、世界各国は、今後、航空機産業を国家の基幹産業と位置付けようとしています。

一方、日本は、「ものつくり大国」として、自動車や電子機器で世界をリードしてきましたが、近年、競争力に陰りが出始め、新しい基幹産業を模索しています。日本の航空機産業は、第二次世界大戦後、航空機の研究や製造が禁止されたため、大きく後退しました。しかし、その間、航空機の技術者たちは、自動車や家電産業の中で、かろうじて技術をつなぎ、加工技術や、材料技術を育て、それらを生かして、再び国産旅客機に挑戦しようとしています。

    国産機の先兵になれるか?MRJ

これは、三菱航空機が開発を進めている日本初の国産ジェット旅客機MRJです。ふつうジェット機というと、ボーイングなど、座席数が200以上のものを連想しますが、MRJは、座席数も100未満の小型ジェット機です。航続距離はおよそ3300キロで、東京からはグアム、台北(たいほく)、上海、北京をカバーでき、世界各国の大都市の拠点空港と地方空港を結ぶことができます。燃費が良く、室内も広いため、アメリカや香港、そして国内の航空会社から、130機の受注を受けていますが、一般的な採算ラインの、400-500機の受注に向けた努力が、今後求められます。

    今後の課題①「世界に売れる機体つくり」

日本の国産ジェット旅客機は、世界に羽ばたけるのでしょうか。そのためには、多くの課題を乗り越える必要があります。

ひとつ目は、当然ながら「世界に売れる機体でなければならない」ということです。これは世界のジェット旅客機のシェアの変化を示したものです。ジェット機の運航機数は、2010年以降、20年間で、およそ2.1倍に拡大し、大きく成長する市場だということが分かります。大きさ別にみると、座席数100以上の中型機、250以上の大型機のシェアは、アメリカのボーイング社と、ヨーロッパのエアバス社が独占しており、今後もその形は変わりそうもありません。そのため、日本は今まで、機体を丸ごと作ることはせず、ボーイングやエアバスの機体の一部を受注してきました。しかし、日本の部品製造レベルは次第に向上し、最新のボーイング787では、全体の35%を占めるまでになりました。一方、中国などの新興国も、部品製造の技術力を高め、日本を激しく追い上げており、日本は、いつまでもこの形に甘んじるわけにはいかない状況にもなっています。

では、中型機、大型機以外はどうでしょうか?

座席数100未満の、小型機ゾーンが、今後、大きく成長することがわかります。MRJは、このゾーンに属します。このゾーンの、今後20年間の需要予測は5000機以上とも言われ、日本が技術的に安定した国産機を作れれば、成功する可能性は十分あります。

また中型機のゾーンは、ボーイングとエアバスが独占しているとはいうものの、LCCと呼ばれる、低価格で運行サービスを提供する航空会社が、今後多くの機体を必要とするため、巨大な需要が見込め、各メーカーは、このゾーンへの参入に熱い関心を示しています。

さて、MRJが属する小型旅客機のゾーンは、ライバルも多く、既存のカナダのボンバルディア社、ブラジルのエンブラエル社に続いて、ロシア、中国も参入を目指しており、日本も含めて5陣営が入り乱れる激戦区です。日本は「後発」のため、既存の国に比べれば市場開拓で後れを取っていますが、後発の強み、つまり最新技術を導入して、燃費効率がよく、CO2排出も少なく、静かな機体を作れるという優位性もあります。いずれにしても、日本は、小型機の国際市場が固まらないうちに、積極的に食い込む必要があります。3月末、宇宙航空研究開発機構JAXAは、航空機開発のための研究拠点を作り、今まで持っていなかった、実験用ジェット機を購入し、今後行われる、MRJの飛行試験をサポートする体制を整えました。さらにMRJ後の国産旅客機開発に対しても積極的にかかわり、加速する方針を打ち出しました。国産機を丸ごと作るのは、部品製造とは比べ物にならない難しさがあります。機体のすべての部分をすり合わせ、統合していく能力が必要だからです。その意味で、MRJの成功は、そのまま日本の真の技術力の証明につながる意味を持っています。

    課題②「総合的なビジネスモデル」

2つ目の課題は、「総合的なビジネスモデルをどう作るか」ということです。旅客機は、技術的に優れていることはもちろんですが、価格を安くしたり、販売後のサービス体制などの充実がなければ、世界市場で勝ち残れません。

日本は、この点で苦い体験があります。およそ50年前、日本初の国産プロペラ機YS-11を開発した時のことです。YS-11は、当時の技術を結集した、優れた航空機でしたが、利益を生み出す価格設定や、ユーザーへのサポート体制がうまくいかず、182機製造した時点で360億円の赤字となり、生産中止に追い込まれました。

「技術で勝ってビジネスで負けた」。

今もよく言われる日本の弱点が露呈した形となりました。

国産ジェット機MRJは、YS11の教訓を生かして、ボーイング社などノウハウを持つ企業と提携して、整備や、パイロットの教育訓練システムを作るなどのサポート体制を充実する予定ですが、かつての失敗を繰り返さないように、十分な体制をとることを望みたいと思います。

    課題③「司令塔の強化」

3つ目の課題は、開発を進めるうえでの「司令塔」の問題です。同じ空の分野でも、日本の宇宙開発は、2008年に施行された宇宙基本法によって、全体の方向性を決める組織や体制について、議論がはじまっています。しかし、航空機産業では、そのような議論はなく、各省庁がばらばらの形で、かかわっている状況です。航空機産業は、経済、政治、安全保障、生活などが融合した分野で、総合的な戦略が必要です。日本の技術力を結集し、どう世界に向き合うのか?企業を国はどう支えるのか?研究開発はどうあるべきなのか?問題は山積しています。一刻も早く議論を始め、産官学が協力したオールジャパン体制を作り上げる必要があります。

    まとめ

1世紀にはいって、世界は急速にせまくなってきました。アジアを中心として新興国が台頭し、ヒト、モノ、情報の行き気が激しくなり、新しいタイプの旅客機が必要とされています。日本が、経済の空洞化というリスクを乗り越え、再びものつくり大国として輝くためにも、国産旅客機の存在は大きいといえます。課題を一つ一つ解決し、今度こそ、日本の翼が、世界の空に羽ばたくことを、期待したいと思います。

|

« 時論公論「加速するか国産旅客機開発」5/2(水)23.50-24.00総合テレビ生放送 | トップページ | くらしキラリ解説「太陽異変 地球が寒くなる?」5月8日(火)10.05から生放送 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537018/54616846

この記事へのトラックバック一覧です: 時論公論「加速するか国産旅客機開発」2012.5.2:

« 時論公論「加速するか国産旅客機開発」5/2(水)23.50-24.00総合テレビ生放送 | トップページ | くらしキラリ解説「太陽異変 地球が寒くなる?」5月8日(火)10.05から生放送 »