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宇宙コラム2「アルマ電波望遠鏡で見る宇宙の神秘」2012.1.19

「私はどこから来たか?私は何者か?そして私はどこに行くのか?」

この問いは人類がずっと追い求めてきた永遠の問いです。現代科学の説明では、宇宙が生まれ、物質が進化し、太陽系が生まれ、生物進化がおき、そして人間が生まれたということになっていますが、それがどのようなプロセスでどのように進んだのか、実はわからないことだらけ。その問いの一つに天文学から答えようとしているビッグプロジェクトを今日はご紹介しましょう。

場所は南米チリの5000メートルの高地にあるアタカマ砂漠。ここに、日本を初めとする世界約20カ国が参加するアルマ電波望遠鏡が建設中です。巨大なパラボラアンテナ66台を最大18.5キロの範囲に設置し、宇宙空間のチリやガス(星間分子雲)、さらにはまだ見つかっていないアミノ酸をも観測して、天体や生命誕生の謎に迫ろうというものです。

電波望遠鏡とはどんなものでしょうか?

宇宙空間の物質はすべて電磁波を出していますが、電磁波の種類は物質の温度によって違います。高温の物質からは波長が短いガンマ線やX線、温度が下がるにつれて紫外線や可視光(私達の目はこの範囲を見ることが出来ます)、温度がぐっと下がるとサブミリ波やミリ波(零下160-260度)といった波長が長いものになっていきます。電波望遠鏡が観測するのは、このサブミリ波やミリ波。つまり天体が誕生する前段階(非常に冷たい!)の、宇宙空間のチリやガスの様子を克明に見ることが出来るのです。

しかし残念ながらこれらの電磁波は、大気中の水蒸気や大気そのものに吸収されやすく、普通の環境では地上にほとんど届きません。そこで選ばれたのがチリのアタカマ砂漠。空気もきれいで、乾燥している為、絶好の建設場所として位置づけられたのです。

しかもアルマ電波望遠鏡は、パラボラアンテナ66台の位置を自由に変え、目的に応じた観測をすることが出来ます。望遠鏡に「口径」という言葉がありますが、口径は大きくなる程はっきりモノを観測できるようになります。アルマ望遠鏡は最大18.5キロの口径の巨大アンテナに相当するので、視力はなんと6000。東京から大阪の一円玉を見分けることができるスグレモノなのです。

 電波で見る世界とはどんなものなのでしょうか?今までの電波望遠鏡が観測した実例を、いくつかご紹介しましょう。

(写真1

たとえば、オリオン座の馬頭星雲を見ると、光学望遠鏡で見えない場所に、ガスや塵が分布している状況がわかります。濃度の高いところを赤く表示していますが、星はこういうところから生まれるのではないかと考えられています。

(写真2

これは超新星爆発のようすです。可視光でみると、輪郭が見えるだけですが、電波望遠鏡でみると、内側のチリやガスの分布状況が克明にみてとれます。

(写真3)

 さらに視野を広げて、銀河の分布を見てみます。可視光でみると、銀河の分布はちらほらみえるが、電波望遠鏡でみると、その間にガスや塵がびっしりと分布しているのがわかります。これらは今後銀河になっていく「銀河の卵」とでもいえるものだと説明されています。

 アルマ電波望遠鏡はこれらの今までの電波望遠鏡と比べて、さらに性能が増すので、たとえば宇宙空間のアミノ酸の分布を調べることが出来れば、宇宙での生命の起源に迫ることもできるかもしれないと期待されています。

アルマ電波望遠鏡には、社会的にも大きな意義があります。66台ものパラボラアンテナの位置を自由に変えたり、観測方法を変化させる為には、様々な高度な制御技術が必要です。またそれぞれのパラボラアンテナが集めた膨大な情報を、一つに統合したり、解析するには、世界最先端の、高度な情報通信技術や信号処理技術蛾必要です。アルマ電波望遠鏡を実現することは、それらの技術の育成も同時に行う必要があり、結果として、参加各国の産業技術への大きな波及効果となっているのです。もちろん日本の技術力はそこでも活躍し、またアルマ電波望遠鏡とともに進化しているわけです。

そしてもう一つの社会的意義。

それはなんと言っても、私達人類の宇宙観を大きく変える可能性があるということでしょう。アルマ電波望遠鏡が、今までわからなかった宇宙の謎をどこまで解明してくれるのか。宇宙がどのように生まれ、進化し、私達につながっているのか。アルマ電波望遠鏡が見つける情報は、「人間とはなにか」という巨大な物語を考えるうえで、この上ない示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

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