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宇宙コラム1「深刻化する宇宙ゴミ」(2012.1.17)

1月16日の未明、ロシアの火星探査機「フォボス・グルント」が、チリ沖太平洋上に落下したとの報道が世界を駆け巡りました。この探査機は、去年11月打ち上げられたものですが、その後、地球軌道の離脱に失敗し、地球を周回したのち落下してきたのです。

じつは最近似たようなニュースが相次いでいます。去年9月にアメリカの衛星「UARS」、10月にドイツの衛星「ROSAT」と、この半年弱で3機もの衛星が立て続けに落下しました。いずれも被害はなかったとはいえ、燃え尽きずに落下する可能性が指摘された点では今までにないことです。

なぜこのようなことが起きているのでしょうか?

背景には、宇宙空間に増え続ける「宇宙ゴミ」の問題があります。

人類は、今までに6700個もの人工衛星を打ち上げましたが、打ち上げたのちのロケットや人工衛星がそのまま宇宙空間に残ったり、残存燃料の爆発や衝突で機体がばらばらになり、宇宙ゴミとなり、問題化しているのです。

今回落ちてきたのは、その一部ということができるわけですが、計算上は、人間に当たる確率は1000年に1回。実際にはまだ怪我などの報告はありません。ということで、地上では、宇宙ゴミを極度に恐れる必要はありませんが、放っておいていいわけはなく、何らかの対策が必要といえます。

じつは、問題は、地上に落ちてくるものよりも、むしろ宇宙空間で飛んでいる宇宙ゴミのほうです。その速度は、なんと秒速8キロ。ピストルの銃弾でも秒速数百メートル以下ですから、もし稼働中の人工衛星や国際宇宙ステーションにぶつかったら大変です。実際、フランス軍事衛星セリーズに宇宙ゴミがぶつかったり(1996年)、アメリカのイリジウム衛星とロシア軍事衛星が直接ぶつかる(2009年)という、史上初の衛星同士の事故も起きています。宇宙ゴミが大きく、事前に軌道が分かる場合は、たとえば国際宇宙ステーションは、事前に軌道修正し、衝突を回避するのですが(1998年以降9回)、回避が間に合わず、乗組員がソユーズに避難したことも2回あるそうです。

宇宙ゴミが多く飛んでいるのは、高度1000キロ以内。この区域は国際宇宙ステーションや観測衛星など多くの人工衛星が稼働している場所なので、問題は深刻です。

ではどうすればいいのでしょうか?

宇宙ゴミで一番問題なのは、10センチ以上の宇宙ゴミです。この大きさのものは地上からも観測可能で、2010年段階で17000個弱が確認されています。冷戦の頃の米ソの衛星衝突実験や、最近の中国の衝突実験のたびに数が増え、この数にまでなってしまいました。10センチ以上の大きさの宇宙ゴミへの対応は、基本的には観測で軌道を予測し、衛星や国際宇宙ステーション側が軌道を変えて回避する方法がとられています。また1センチ以下のものは、例えば国際宇宙ステーションでは機体を強化して、穴があかない構造にして対処しています。しかし問題は1-10センチの宇宙ゴミで、対応のしようがないのです。

今後は、宇宙ゴミの観測能力を向上させたり、機体を強化するなど対策を進める必要がありますが、新たに打ち上げる衛星がこれ以上宇宙ゴミにならない工夫も重要です。そのためには、使用後残った燃料でコントロールして海に落ちたり、テザー(ひも)をとりつけて人為的に落下させ、大気圏で燃え尽きるような工夫も必要で、その対策をどのように進めるべきか、国連でも議論が始まっています。

いずれにしても宇宙は人類共通の財産。宇宙の環境問題をこれ以上悪化させない認識を、各国が今以上に持ち、行動に移すべき時が来ていると言えるのではないでしょうか。

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