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時論公論「北極オゾンホールの意味」2011.10.24

    リード

北極の上空に、南極のオゾンホールに並ぶ規模のオゾン層の破壊がおきていることが、日米などの国際共同研究でわかりました。北極にオゾンホールが確認されたのは、観測史上初めてです。北半球は緯度が高い地域にも多くの人々が住んでいるため、今後の影響が懸念されます。今夜は、北極にできたオゾンホールの意味と対策について考えます。

    オゾンホールとは何か

私たち人間を含むすべての生物は、地球が持つ絶妙の仕組みの中で生かされています。その仕組みのひとつが上空20-30キロにあるオゾン層です。オゾン層は、地球に大気が生まれる過程で出来たものですが、有害な太陽の紫外線を吸収し、生物を守る働きをしています。このオゾン層が破壊されると、人間も含め、生物に悪影響が出る恐れがあります。

今から30年前の1980年代、世界各国は、冷蔵庫やエアコン、缶スプレーなどにフロンという気体を使っていました。フロンは圧力をかけると、安定した性質を保ったまま、気体と液体の間を行き来し、熱を運ぶ気体「冷媒」としては最適な「夢の気体」と呼ばれていました。ところが研究の結果、このフロンが大気中のオゾン層を破壊することが分かり、国際的な問題となりました。1987年、国連は議論の末、フロンの使用を禁止するモントリオール議定書を制定しました。しかし、フロンは2050年ころまでは大気中に残存するため、長期間、オゾン層に影響を与えるのではないかと心配されてきました。

異変は、南極ではじまりました。

これは、2009年に南極で観測されたオゾンホールです。南極大陸を大きく包み込む大きさまでになっています。1982年、初めてオゾンホールが発見された後、年を追って大きくなり、2000年以降も、ほぼ同じ大きさのままです。オゾンホールができると、太陽の紫外線をさえぎれなくなり、地上に降り注いで、皮膚がんや白内障などの原因になります。

オーストラリアやニュージーランド、チリやアルゼンチンなど、南極に近い国々では、住民が太陽の紫外線を大量に浴びないように、サングラスをつけたり、皮膚を隠すなど、さまざまな対策が取られています。

    わかってきたオゾンホールができるメカニズム

オゾンホールは、なぜ南極にできたのでしょうか?それは、気温と深く関係しています。フロンは放出された後、通常の大気温ではおとなしくしていますが、気温がおよそ-80度まで下がると、活性化してオゾンを破壊し始めます。これは南極上空の成層圏の平均気温の変化です。南極は巨大な大陸で、気温の低下が激しく、特に5月から10月にかけて、成層圏の気温が-80度を下回ります。この低温によって、フロンが活性化し、オゾン層が破壊されるのです。しかし北極では、寒くなる冬の間でも、気温はそこまで下がりません。平均気温を見ても、-80度ギリギリのところで止まっています。このため、科学者たちは、北極上空ではオゾン層の破壊はそれほど進まず、オゾンホールはできないだろうと考えてきました。

ところが今年3月、その北極上空に、突然オゾンホールが現れました。画面中央の青と紫色のところがオゾンホールです。北極上空にできたオゾンホールは、面積を拡大しながら、風に乗って西から東に移動し、北極を取り巻く各国の上空を通過して、4月半ばに消えて行きました。この事実は、世界の研究者に大きな衝撃を与えました。

    北極になぜオゾンホールができたのか?

なぜ、北極上空にオゾンホールができたのでしょうか?去年の11月頃から今年の春にかけての、北極上空の成層圏の気温変化をみると、1月頃から気温が急激に下がり、4月にかけて-80度を下回っています。平均気温から10度も低く、今まで見られなかった現象です。専門家は、この極端な気温低下がオゾン層の破壊を生んだと考えています。また、北極のオゾンホールは、南極ほど薄くはなっていないものの、元々、オゾンの濃度が高いため、破壊されたオゾンの量は、高度20km付近では最大80%。南極のオゾンホールに匹敵する量だと述べています。

北極上空の気温が、なぜ急激に下がったのでしょうか?

詳しいメカニズムは、まだよくわかっていませんが、専門家の中には、今年の北極は、この30年の観測で最も寒く、異常気象の影響だと指摘する人がいます。

もうひとつ、原因として指摘されているものがあります。

それは、地球温暖化を引き起こす、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加です。温室効果ガスは、ため込んだ熱を放出する性質を持っているため、地表近くでは放出された熱が地面を温め、温暖化につながります。しかし成層圏のように高度数十キロの高い場所では、熱を放出しても温めるものがないため、気温が逆に低下していきます。つまり、温室効果ガスが大気中に増えれば増えるほど、地表では温暖化が進み、成層圏では気温が下がるというのです。これは二酸化炭素の世界平均濃度の変化です。この20年で、およそ10%も増加しています。二酸化炭素の濃度は、地球上では一定で、北極上空でも同じ様な数値になります。専門家は、今年の北極のオゾンホールは、異常気象による低温化と、温室効果ガスの増加による低温化が合わさって起きたのではないかと考えています。

    北極オゾンホールの影響は?

北極でできたオゾンホールは、私たちにどのような影響を与えるでしょうか?

オゾンホールの動きをよく見てみると、北欧やロシア、カナダなど、北極に近い国々を通過しています。人間活動が盛んで人口が集中している場所もあり、今後は、皮膚がんや白内障など、さまざまな対策を進める必要があります。

では、日本への影響はどうでしょうか?

オゾンホールは4月半ばに、いったん消えたように見えますが、4月末から5月にかけて、日本上空を、オゾンホールの一部が、通過していることが分かります。その時の紫外線の量は、通常よりも多かったことが確認されています。

    今後の対策は?

今後、北極のオゾンホールをなくすために、どのような対策をとればいいのでしょうか?

1に、これからも北極上空の観測を続けることが重要です。オゾン層の破壊など、大気の変化は長期間観測を続けないとわからないことが多く、そのデータに基づいて初めて対策が可能になるからです。2つ目は、フロンの後処理をきちんと進めることです。フロンは、古いエアコンや冷蔵庫、断熱材などを廃棄するとき、熱を加えれば壊すことができます。しかし、最近、特に開発途上国でフロンの熱処理を怠っているケースがあります。大気中にフロンを増やさないために、国際的な協力を進める必要があります。3つ目は、温暖化対策です。今、CO2などの温室効果ガスは、新興国を中心に急増しています。世界各国は、今後、化石燃料の使用を控え、省エネ対策を進め、地球温暖化を食い止める必要があります。フロンは、実は、二酸化炭素の数千倍もの温室効果を持っています。オゾンホールの問題を解決することは、温暖化を解決することにもつながるのです。

    まとめ

今回の北極での出来事から、私たちは何を学ぶべきでしょうか?私は、自然のメカニズムの複雑さを、もう一度認識しなおす必要があると思います。今まで、地球温暖化とオゾンホールは、直接には結びつかないとされてきました。しかし、科学研究が進むにつれて、その関連が分かってきました。自然現象は、私たちの予想以上に奥深く、何が起きるかわからないのです。もうひとつの学ぶべきこと。それは、国際社会が、地球環境を守る意識を、長く、きちんと共有する必要性です。モントリオール議定書で、フロンの規制がかかっているにもかかわらず、一部の国々で、その精神が守られていない状況が生まれている今、先進国からの粘り強い働きかけや協力が必要といえます。国際社会が歩調を合わせ、地球とどう向き合っていけばいいのか。北極のオゾンホールは、そのことを改めて、問いかけているように思います。

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