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時論公論「放射能とどう向き合うか」2011.4.26

  リード

今日は、25年前、チェルノブイリ原発事故が起きた日です。世界中が震撼し、炎上した原子炉の収束に10日間が費やされました。東京電力福島第一原発の事故は、大量の汚染水に阻まれ、1か月半たった今も収束せず、放射性物質が出続けています。この長い闘いに、私たちは、どう向き合えばいいのか?今夜は「放射性物質」と私たちの関わりについて、考えてみたいと思います。

  わかってきた汚染状況

原発から放出された放射性物質の分布は、今、どうなっているのでしょうか?福島大学が測定した結果をみると、現在分布している放射性物質のほとんどは、3/15に放出されたもので、風に乗って、30キロの範囲を超え、北西方向に移動し、山肌を覆うような形で、落ちて行ったと推測されます。福島市、郡山市にも、薄い分布がありますが、風が、さらに山を越えたか、南西から北方向に大きく曲がったかした後、放射性物質を雨が落として、飛び地状になったのではないかと考えられています。チェルノブイリでもそうでしたが、放射性物質の分布は、このように予想できない形になります。この図に、政府が予測した、今後1年間の積算線量をかさねると、等高線状の分布があらわれます。政府は、年間積算20ミリシーベルト以上の場所を「計画的避難区域」とし、3000世帯およそ1万人の住民に対して、1か月をめどに避難するように呼びかけました。さらに、すでに住民避難が行われた20キロ圏内を、法律で完全に立ち入り禁止とする「警戒区域」とし、20-30キロの「緊急時避難準備区域」の住民には、今後、緊急時には、自力で屋内退避や避難をするように要請しました。なぜ20ミリシーベルトが、避難の基準なのでしょうか?これは放射線の人体への影響を示す図です。年間100ミリシーベルトは、通常の緊急作業員の被ばく限度で、健康被害の目安とされています。それ以下の場合は、放射線によるいわゆる急性症状が出ず、将来がんになる確率も下がっていきます。

4年前、国際放射線防護委員会ICRPは、これらの研究成果も踏まえ、原発事故など緊急時の一般人の被ばく量を、年間20-100ミリシーベルトにとどめるべきだと勧告しました。今回の方針は、その考えを取り入れ、最も厳しい「20ミリシーベルト」を採用したものです。

●住民の体は大丈夫か?

では、これらの対策で、住民の健康は守られるのでしょうか?人体への影響で、主に問題になるのが、放射性ヨウ素と放射性セシウムです。チェルノブイリ事故では、放射性ヨウ素が人体に取り込まれ、子供の甲状腺がんが多発しました。住民は、長い間事故の実態を知らされず、大量の放射性ヨウ素が、食べ物を通じて体内に入ったのです。今回の事故でも、まず心配されたのが、子供への影響でした。国の原子力災害現地対策本部は、3月28日から3日間、後に計画的避難区域となる、飯舘村(いいたてむら)や川俣町(かわまたまち)の、15歳以下946人の子供を対象に、甲状腺の被ばく量を測定しました。そして、国の基準値の1時間0.2マイクロシーベルトに対して、最高でも0.07マイクロシーベルトで、問題ない数字だということを確認しました。放射性ヨウ素は、放射線の量が半分になる「半減期」が8日と短く、その後、原発からの大きな放出もないため、危険性は徐々に弱まっていると考えられます。もう一つの「放射性セシウム」はどうでしょうか。チェルノブイリでは、大量の放射性セシウムも放出されましたが、住民の健康被害との因果関係は確認されていません。しかし、放射性セシウムは、半減期が30年と長く、環境にとどまって生物濃縮などを起こすため、農作物(のうさくぶつ)や水などの環境の管理が必要となります。細川厚生労働大臣は、先週20日の衆議院厚生労働委員会で、今後、住民一人ひとりの、今までの行動と居場所を照合し、被ばく量を広範囲に調査する必要性があると述べました。そうすることで、一人ひとりの健康チェックがきめ細かくできるばかりでなく、避難が終わって再び故郷に戻るとき、被ばく量を積算して、どの地域にどのくらい住むことができるかを判断することができます。その意味でも、被ばく量の測定は、今後早急に検討しなければならないことの一つです。今、避難区域に指定されていない地域で、一つの波紋が広がっています。文部科学省は、先週19日、福島県内の学校などの限界放射線量を、1時間当たり3.8マイクロシーベルトと設定しました。この数値は、ICRPが示した、事故復旧時の放射線基準に基づいたものですが、測定の結果、13の保育園、幼稚園、小中学校で目安以上となり、屋外活動を1日1時間に制限することにしました。また、福島県内の5つの公園でも、基準以上の数値が測定され、同じ措置が取られました。学校では、今後週一回程度の線量調査を続け、2回連続で基準を下回れば、通常の状態に戻す計画ですが、子供の健康にかかわることだけに、一刻も早い対策が必要です。すでに、一部の地域では、表面の土を削って取り除くことも検討され始めています。

●汚染地図を完成させよ

私たちは、今後、どのように放射能と向き合えばいいのでしょうか?そのためには、正確な汚染マップを一刻も早く作ることが大切です。放射性物質は同じ場所でも、水の流れ方、土の性質で、数値が大きく変わります。今後は、現実に即した細かいマップを作り、それに従って、避難や土地利用のあり方を決めていく必要があります。

水の動きも重要です。産業技術総合研究所が、福島第一原発周辺の地層を調べたところ、一番上に、地下水が流れる5メートルほどの砂と土の層があり、その下に、水を通しにくい20メートルほどの粘土層があることがわかりました。青と赤の矢印は、原発から30キロ付近の地下水の流れの方向を示しています。青は、円の内側に、赤は外側に向かっています。地下水のほとんどは内向きで、放射性物質が混入した場合、海に流れ出します。また、30キロ圏の境の一部では、円外に向かっているため、この地域が放射性物質で汚染されていた場合、近くの町や市の方向に、ゆっくりと汚染が広がる恐れがあり、さらに詳しい調査が必要です。また、今後、この地域に井戸を掘る時、粘土層の下から水を汲みだせば、放射性物質を含まない水を、農業用水や工業用水として利用できることもわかりました。このように、放射性物質の分布や、土地の仕組みを立体的に知ることは、今後の復興の有力な足がかりになるのです。

●まとめ

放射能との闘いを終えるために、今、何よりも必要なことは、原発事故そのものを、一刻も早く止めることです。福島原発では、およそ900人の作業員が、十分な栄養と睡眠がとれず、極度の疲労とともに戦っていますが、働く環境を大幅に改善し、全面支援することが急務です。一方、私たち市民は、放射性物質に対して、科学的な目を持ち、冷静に、向き合う必要があります。風評に惑わされず、過度に恐れず、正しく怖がる。また、「確認されていない」ことを「ない」と混同することも戒める必要があります。放射性物質の影響を知るためには、長期間にわたる取り組みと研究が必要だからです。チェルノブイリ事故の後処理は、25年たった今も続いています。福島第一原発を巡る取り組みも、今後、長く続きます。私たち一人ひとりに、放射性物質と正しく向き合い、それを乗り越えていく知恵と覚悟が求められています。

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