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金星探査機「あかつき」が解く宇宙の謎2010.5.24

    打ち上げ成功!

先週金曜日、国産ロケットH2Aで、見事打ち上げに成功した、金星探査機「あかつき」は、今後、半年かけて金星に接近し、金星の軌道上から2年間の観測を行います。地球は、太陽系の、内側から3番目の惑星ですが、金星は、地球の一つ内側。2番目の軌道を回っています。太陽に近いため、強い太陽エネルギーが降り注いでいます。そのため、「あかつき」の通信用アンテナは、熱がたまりやすい「おわん型」ではなく、平らに作られ、高温に耐える構造になっています。「あかつき」は、今まで謎が多かった金星の気象を調べる、いわば、気象衛星「ひまわり」の金星版です。このような本格的な惑星気象衛星が打ち上げられたのは、世界でも初めてです。可視光、紫外線、赤外線など、5台の国産カメラを搭載し、金星上空から地表までの大気や雲の状態、風や気温などを立体的に観測します。そして、「惑星気象学」という、新しい視点を確立し、金星の謎とともに、太陽系の進化のプロセスや、地球の気候や気象のメカニズムの本質にも迫ろうとしています。

    金星の謎とは

「あかつき」が探る、金星とは、どんな星なのでしょうか?今から46億年前、宇宙のチリが集まって太陽系ができるとき、金星と地球は、ほぼ同じ場所に、同じころ誕生しました。金星は、地球から最も近い惑星で、大きさも質量も似ているため、「地球の双子星」とよくいわれます。生まれた直後は、水の海があり、似た環境だったと考えられています。しかし、その後、両者は、全く違う運命をたどりました。地球は、その後徐々に気温が下がり、海が残り、大気中の二酸化炭素が、海に吸収され、酸素が生まれ、多種多様な生物が登場しました。しかし金星では、なぜか海が消え、苛酷な環境となっていきました。金星には、太陽系を代表する、数々の謎があります。金星は、地球など、一般的な太陽系惑星とは、逆の方向に自転し、磁場もありません。大気の90数%が二酸化炭素で、地表は、鉛も溶ける、摂氏460度の灼熱地獄。気圧も、水深900メートルに相当する、90気圧というすさまじさです。もし金星の地表に立つことができたら、まるで高温の圧力釜の中のような岩だらけの世界で、太陽が西から昇り、東に沈む、不思議な光景を見ることになります。さらに、秒速100メートルの猛烈な風が、常に吹き続け、60キロ上空を、厚さ20キロの濃硫酸の雲が取りまいています。金星が、明け方、銀色に明るく輝いて見えるのは、この濃硫酸の雲が、太陽光線のほとんどを跳ね返しているからです。金星は、地球よりも太陽に近いため、地球の2倍の太陽エネルギーを受けてはいるのですが、厚い濃硫酸の雲がそれをさえぎり、地表に届く太陽光線の量は地球の十分の一しかありません。金星の地表面温度が460度の高温になったのは、大気のほとんどを占める、二酸化炭素が、強い温室効果で熱をとらえ続け、気温が極端に上がった結果です。金星のこの姿は、ある意味では、温暖化現象の、究極の形ともいえます。

なぜ金星は、このような死の星になったのでしょうか?そして、なぜ地球は、生命あふれる豊かな星になれたのでしょうか?金星の謎を探り、地球との違いを調べることが、惑星がたどる様々なプロセスを知り、結果的に地球という惑星を深く理解することにつながります。

●「あかつき」がせまる金星の謎

「あかつき」は、金星の何を調べるのでしょうか。第一に、「スーパーローテーション」と呼ばれる、猛烈な風が、なぜ起きているのか、そのメカニズムに迫ります。普通、風は、自転する地面に引きずられて生み出されるため、自転のスピード以上にはなりません。金星の自転は243日でやっと一回転。速さは、秒速1.6メートルしかないのに、風は、秒速100メートル。自転の60倍もの速さで、一方向に吹き続けているのです。これは、地球では見られない現象です。地球の風は、複雑です。高緯度では偏西風が自転の方向に、低緯度では貿易風が自転と反対方向に吹き、さらに南北の風と絡み合って、熱、空気、水を地球全体に運搬し、複雑でバラエティに富んだ気候を作り出しています。一体、どのような条件が重なれば、金星のように、スーパーローテーションが吹くようになってしまうのか?そのメカニズムを知ることは、地球の複雑な風が、安定して吹き続けている秘密を探ることにつながります。そして、広く惑星を探査することで得られる「惑星気象学」の視点が、地球温暖化などによる、気候変動のメカニズムなど、わからないことが多い地球上の現象を、さらに深く解明することにつながると期待されています。「あかつき」は、このほかにも、硫酸の雲で起きているのではないかとされている、雷の有無を、実際にカメラで確認します。雷は、地球では、水分を含んだ積乱雲の中で起きます。もし金星で雷が確認されれば、あたたかく乾燥した大気で起きる、未知の雷のメカニズムと直面することになります。さらに、地球のように火山活動があるかどうかを調べるなど、金星の多面的な姿が浮き彫りにされます。

「あかつき」がおこなうような惑星探査は、私たち人間社会に、どのように役に立つのでしょうか?残念ながら、その成果が、今すぐ何かの役に立ったり、経済的利益を生み出すということはありません。しかし、長い目で見たとき、人間の意識や、社会を大きく変えていく可能性があります。

    解明進む太陽系の姿

人類は、今まで100以上の惑星探査機を、宇宙に送り出しました。探査機の映像やデータは、そのつど、私たちに、宇宙についての知的興奮と驚きを与えてきました。惑星探査の歴史は、人類の知識の拡大そのものであり、宇宙とは何か、地球とは何か、生命とはなにかという、根源的な問いかけを、私たちに示し続けてきました。探査機ボイジャーが撮影した、木星の衛星イオの写真は、生きている星特有の、ダイナミックな火山活動が、地球以外にもあることを、はじめて教えてくれました。土星では、望遠鏡では決してみることができない、複雑で精緻な輪の姿が、映し出されていました。そして、太陽系の果ての惑星、海王星の美しい姿に、世界中の人々が息を飲みました。探査機カッシーニに搭載されたホイへンスが送ってきた、土星の衛星タイタンの写真には、メタンでできた、川や海など、なぜか地球そっくりの風景が広がっていました。火星表面を探査した、探査機オポチュニティーが撮影した写真には、かつて火星に水が流れたことを示す、様々な証拠が映し出され、火星に生命が存在できる環境があったことを伝えてくれました。火星の風景は、どこか見慣れたもので、我々は、宇宙の中で孤独な存在ではないのかもしれないということを感じさせてくれました。ボイジャーは、今、冥王星を越え、太陽系の外に向かって飛んでいます。ボイジャーが、冥王星の外から撮影した地球をみると、宇宙空間は、漆黒の闇に満ち、地球のはかなさとかけがえのなさがわかります。人類が送り出した数々の探査機は、このように、太陽系や宇宙の知られざる姿を次々ととらえ、私たちの精神世界の拡大と進化を促していきました。宇宙を知ることは、人間とは何かを知ることでもあるのです。

    まとめ

さて、金星探査機あかつきは、今年の12月上旬、金星軌道に到着します。2年間に渡る金星探査は、私たちにどのような新しい宇宙像を伝えてくれるでしょうか。今後の探査の成功と、成果に期待したいと思います。

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