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時論公論「電気自動車がもたらすもの」2009.11.4

(アナ)

究極のエコカーのひとつといわれる電気自動車の開発が活発になってきています。電気自動車とは何か?その可能性と課題について。室山解説委員がお伝えしま

(室山)電気自動車は、家庭のコンセントからも充電し、走ることができます。温暖化の原因の二酸化炭素を出さずに走れる「究極のエコカー」のひとつです。

(V1千葉県の幕張で今日まで行われた、「東京モーターショー」は、不況の影響で、参加企業が半減してしまいましたが、温暖化を背景に、環境技術が前面に出て、エコカー一色となりました。現在売れ行きが好調なハイブリッド車に並んで、各社の電気自動車がずらりと並びました。種類も多種多様で、来年発売の大型の5人乗りのものや、荷物を多く運べるカーゴタイプ、未来の乗り物を思わせる形のものまで、エコカーの中で、電気自動車の存在が、大きくなっていることを感じさせました。

電気自動車の特徴はどのようなものでしょうか。

P1一般的なガソリン車は、ガソリンを燃料として使い、エンジンで走るため、走行中、地球温暖化の原因のCO2を排出します。自動車が排出するCO2は、運輸全体の9割にあたり、対策が強く求められてきました。現在のエコカーの主流、ハイブリッド車は、ガソリン走行時のエネルギーの一部を電気にしてバッテリーにたくわえ、エンジンとモーターで走ります。そのためガソリン車に比べて、CO2排出と燃費が、およそ4割改善します。電気自動車は、そのハイブリッド車からエンジンをとり、車の外から電気を入れて、バッテリーに充電し、モーターだけで走ります。最近、リチウムイオン電池など、バッテリー性能が飛躍的に向上し、電気だけで走れる距離が、大幅に延びました。走行中のCO2排出はゼロ。発電所で電気をつくるプロセスを入れても、CO2の排出は、ガソリン車の1/4ですみます。燃費も、ガソリン車の1/4から、深夜電力を使えば1/13で済みます。電気自動車のライバルに、水素を使った燃料電池車がありますが、開発に時間がかかっており、電気自動車が一歩先行する形となっています。

電気自動車には、エコカーとしての特徴の他に、構造上大きな特徴があります。P21つめは、仕組みが簡単で、作りやすいという点です。ガソリン車の場合、車体を構成する部品の数は、およそ3万個。エンジンなども複雑で、特定のメーカーにしか作ることができません。ところが、電気自動車では、モーターも入手しやすく、部品は、少ない場合3000個程度で済みます。また、ガソリン車が、エンジン、シャーシなどの基本的なパーツに縛られ、設計に制約があるのに比べて、電気自動車は、モーターを車輪に入れたりして、自由な空間を生み出し、斬新なデザインと機能を追求することができます。

(V2この電気自動車は、コンピュータ制御で、車輪を別々に動かし、従来の車と、全く違う動きができます。ドライバーと音声を使ってコミュニケーションし、運転をより簡単にするシステムがあるなど、車というより、むしろロボットに近い乗り物です。一人乗りのこの車は、スピードと形を自由に変えながら走行できる、パーソナルカーと自動車が融合した、新しい発想の乗り物です。このように、電気自動車は、技術的に、敷居が低く、開発できる余地が大きいため、家電メーカー、玩具メーカー、IT企業など、いままで自動車と関係がなかった企業でも、新規産業として参入できる側面があります。「ビッグ3からスモール100へ」。一部の巨大な自動車産業の独占が崩れ、多種多様な企業が、開発を競い合う、新たな時代に入ろうとしています。

電気自動車には、エネルギー社会そのものを変えていく側面もあります。

(V3今後、太陽光発電などの再生可能エネルギーが、社会の中で、大きな役割を果たすようになっていきます。しかし、太陽光発電の場合、昼間しか発電できないという欠点があり、電気をどのように蓄えるかが課題でした。

(3もし、家庭の太陽光発電と電気自動車をつなげば、発電、走行のすべてで、CO2ゼロを目指すことができます。そして、夜間は、電気自動車に残された電気を、家庭で使ったり、災害の時などにも役立てれば、お互いの長所を生かし合うシステムができます。最近、再生可能エネルギーによる不安定な電力を、スマートグリッド(賢い送電網)と呼ばれる、ITを組み込んだ、新しい送電網で、ネットワーク化していくという発想が出てきました。中央のコンピュータで、家庭や企業の消費電力量を把握し、それに合わせて電力会社の発電量を決めたり、各家庭で発電された電力の余りを、リアルタイムで融通し合うシステムです。電気自動車付きの家と、このスマートグリッドをつなげば、各家庭の電力を、よりスムーズに、町全体で共有することができます。

さて、こう並べると、電気自動車は、いいことづくめで、今すぐにでも社会を変えそうな印象がありますが、そうではありません。今後、解決しなければならない、数々の課題があります。(P4)1つ目は、「バッテリー」の容量不足です。リチウムイオン電池の出現で、たしかにバッテリーは、大きく進歩しましたが、今発売されている電気自動車でも、走行距離は最大160キロ。長距離走行には不向きです。しかも家庭での充電時間は、満タンまでに14時間もかかります。現在20-30分で充電できる急速充電装置を、町の各所に設置しようとしていますが、まだ全国で80個所と少なく、十分な体制とはいえません。今後、リチウムイオン電池の性能を超えた、次世代バッテリーをいつまでに実現するのか、それとも、社会インフラを優先し、電気自動車をローカル型交通機関として充実させていくのか、未来図はまだ描ききれていません。

2つ目の課題は、「価格が高すぎる」ことです。現在発売されている電気自動車は、ある機種で460万円。国と最も進んだ自治体の補助金を合わせても、250万円もします。同型のガソリン車は158万円ですから、今後生産量が上がり、もっとコストが下がらないと、普及にはつながりません。

3つ目の課題は、意外にも「静か過ぎる」ということです。電気自動車は、モーターで走るため、走行中ほとんど音がしません。そのため、商店街や人通りが多い道に入った時、お年寄りや視覚障害の方々には、車が近づいていることがわからない危険性があります。このため、国やメーカーでは、走行中に何らかの音をつけることを検討しています。

このように電気自動車には、本格的な普及に向けて、まだいくつもの課題が残っています。さて、私は、電気自動車の最大の特徴は、社会と強く連動する点だと思います。たとえば、「静かすぎる」ことについても、本来これはいいことで、立体交差などで、人間と車がすみ分けし、人間優先の街になってさえいれば、問題ないことです。また、電気自動車は、走行中のCO2排出が、確かにゼロですが、効率の悪い火力発電所の電気を使っていては、意味がありません。つまり、電気自動車が使う電気を、どこでどのように作るのかが問われてくるのです。このように、電気自動車は、社会の低炭素化や交通行政のレベルを見る、リトマス試験紙のような存在でもあります。

さて、今年12月、デンマークで、京都議定書以降の、世界の温暖化防止体制を決める重要な会議が開かれます。低炭素社会を実現するための、国際社会のありかた、技術の在り方など、幅広い議論が行われます。私たち人類は、今まで技術を使って、豊かさを手に入れてきましたが、その半面、地球温暖化という負の遺産も残しました。そして今、技術が引き起こした問題を、新しい技術の力で解決しようとしています。電気自動車の向こうに透けて見える、様々な光と影を、丁寧に整理し、人間のための技術と社会の在り方を、もう一度、じっくりと考えてみる時期なのかもしれません。

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