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2009年7月

硫黄島に原初の皆既日食を見た(3)

硫黄島から帰って、いいようのない「違和感」が続いている。それは硫黄島と東京(日本あるいは文明社会)の間にある「空気感」の違いだ。ぼくは確かに硫黄島で「皆既日食」を見た。火山島特有の黒い浜に打ち寄せる波。低い草や浜の花をなびかせる風。突然のシャワーのような雨。そして見上げれば「黒い太陽」。それを見上げ、僕は言葉を失い、その壮大さに目を見張り、たしかに唸り声を上げた。5分後、太陽は再び光を取り戻し、元の強烈な存在に戻って行った。僕は再び元の僕になり、硫黄島の湿った空気を肺に吸い込み、暑さに汗をぬぐった。しかし、それが一体どうしたというのか。僕が体験したのは、ただ、それだけのこと。それ以上でも、それ以下でもなく、いつもと少し違うことに驚き、心の中に台風が生まれ、5分後、少し変容した身体と心をよすがに、淡々と元のリズムに戻っただけのことなのだ。

ところが、東京では想像しない事態が起きていた。その様子はNHKを通じて生放送されて、社会の中で「波紋」を広げていた。東京に帰って僕は驚いた。数知れぬ人がその時の生映像を見、感想を述べていた。ユーチューブでは30万件以上のアクセスがあり、見知らぬ人々のブログに、僕たちのことが書き込まれ、「僕たちの体験」は解析、評価、批判を経て、「共同幻想」となっていた。

この違和感は何なのだろうか?風、波、大気に包まれた硫黄島は、移ろう太陽系や宇宙のリズムと連動した「時計」のように思えた。もし、今僕がそこに立ち、東京や日本を見つめることができたなら、日本という国土が、白い「情報」の糸に覆い尽くされた、まるでカイコのような異常な世界に思える。自然から隔絶され、人間界のルールで制御され、果てしない情報を生みだし続ける「マトリクス」のような世界。

こんなことを僕が言うのはよくないのかもしれない。マスコミこそそのシステムの張本人だからだ。しかし、そのように自分を責め、正当化する言葉を探しても、「違和感」は残る。その違和感は少し「危機」の匂いもしている。

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硫黄島に原初の皆既日食を見た(2)

太陽はすべての源。その巨大なエネルギーで、地球上の森羅万象と、生命の誕生と進化をつくりあげてきた。太陽は光り輝き、あまりにもまぶしすぎるため直接見ることができない。しかし、月が太陽をかくしてくれる「皆既日食」のとき、ぼくらはやっとその偉大な姿の一部を目撃できるのだ。

数年前、まだ僕がプロデューサーだった頃、インドのアジャンタとエローラ遺跡に行ったことがある。古い遺跡から新しい遺跡に向かって、掘られた様式や内容が、時代ごとに、すこしずつ変化する様が興味深かった。たとえば原始仏教では仏陀の姿はない。しかし、少し時代がたつと、仏陀の足跡が描かれ、やがて仏像が見られるようになっていく。「なぜか?」と問うと、もともと仏陀はあまりにも偉大すぎて、形にしてはいけないものだったのだそうだ。仏陀の権威が少し下がった時も、足跡という形でのみ、仏陀の存在の表現が許された。やがて仏陀の権威が薄れるに従って、仏像が出現したというのだ。

仏陀と太陽は、直接比較することはできないのだろうが、僕には、「ありがたすぎて直接見ることができない」点で、なんだか両者は似ているような気がした。

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びっくらこいてしまいました!

硫黄島から帰ってブログをつけたのち、どういうことか昨日夕方からアクセス数が急に増え、今まで体験したことのない状況になっています。もともと僕のブログは日記代わりなので、一部の友人しか知らず、たいしてアクセスされない地味なものだったのですが。。。やはり硫黄島中継がきっかけでしょうか?今日明日は番組の準備で忙しいのですが、時間を見て硫黄島報告パート2(3?)も書いてみようかなあ。。。それにしても温かいコメントありがとうございました。お一人お一人の言葉が胸にしみて、とても幸せになりました。

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硫黄島に原初の皆既日食を見た

今日、太平洋戦争の激戦地、硫黄島の皆既日食中継から帰ってきた。硫黄島は、今なお各所に戦車や大砲の残骸、壕が残り、1万人以上の遺骨が眠るすさまじい島。栗林中将の執務室のある壕にも入った。身を狭めても通れない程の穴が地下に向かって延び、次第に蒸し暑さが増し、もう地上に戻れないのではないかと恐怖感すら覚える。言い古された言葉だがまさに地獄。よくぞこんなところに潜み戦ったものだ。
何の因縁か、その硫黄島が今回の皆既日食観測のベスト地点とわかり、国立天文台のチームのお世話になりつつ、自衛隊機で島に向かい、生中継にのぞむことになった。NHKスタッフは僕を入れてわずかに4人。重量や人数制限でこの数に絞り込んだのだが、通常あり得ないわずかな人数。装置とスタッフの不足で、東京からの映像の送り返しも見えず、コーディネーションの声も聞き取りにくい環境での中継だった。そして空からは突如スコールが降り、生放送の直前でも避難せざるを得ない、今まで体験したことにないきびしい状況となった。僕たちはずぶぬれになりながら、雲の合間にやっと皆既日食を目撃できた。
皆既日食の光景はすばらしいものだった。今までテレビで見たことはあったが、現場で見るとまるで違った。しかも今となると、中継環境の悪さが逆に幸いだったとすら思える。それは、結局、現場で「生皆既日食」を見続けることができたのは、僕だけだったからだ。カメラマンはカメラのファインダー越しの日食しか見ない(それが仕事)。天文台の先生方もモニターや太陽が送ってくるスペクトラム分析のモニターは凝視するが、「生日食」は見ない。僕のようなリポーターも普通は、太陽の話になるときはモニターを見ながら話すのだが、送り返し映像を見ることが出来ないので、僕はそのすべてのプロセスを肉眼で見届けることになった。テレビを見た人の中には、僕のコメントと太陽の画像がシンクロしていないことに気づいたヒトもいるだろうが、それはそういう理由からだった。
それにしても、肉眼で見る皆既日食はすごかった。太陽のドラマチックな変化とともに、周囲360度の状況が同時に変化するのだ。「日食は目で見るものではなく、体全体で感じるもの」と言ったヒトがいたが、まさにその通りだと思った。
息をのむような天体ショーの最中も、硫黄島は静かだった。皆既日食では、普通人間の集団から歓声や拍手が起こり、ざわめきに包まれるものだが、硫黄島で聞こえたものは、波の音だけ。硫黄島の前回の皆既日食は850年前。人も住まず、鳥と小さな昆虫しかすまない硫黄島上空を、きっと皆既日食は、このように、音もなく、悠然と通り過ぎていったのに違いない。
僕は偶然にも、硫黄島に「原初の皆既日食」を見る、おそらく初めてのテレビマンとなった。http://search.jword.jp/cns.dll?type=lk&fm=127&agent=11&partner=nifty&name=%A5%E6%A1%BC%A5%C1%A5%E5%A1%BC%A5%D6&lang=euc&prop=494&bypass=2&dispconfig=

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スタパ「ここまできた!電気自動車」2009.7.2

(アナ)

究極のエコカーの一つといわれる「電気自動車」が間もなく本格発売。室山解説委員。どんな状況ですか?

(むろ)

今最後の仕上げ。間もなく電気自動車を街でよく見かける時代になる。VTRこれが電気自動車。軽自動車のタイプで、電気を充電してはしる。今月下旬、2つのメーカーから発売予定になっている。

(アナ)

電気自動車がなぜ急に脚光を浴びてきたのか?

(むろ)

電気自動車の技術のポイントはバッテリー。性能の良いバッテリー(リチウムイオン電池)が登場して一気に状況が変わった。また温暖化対策、エネルギー対策にもなるという追い風も吹いている。

(アナ)

どんな仕組み?

(むろ)

P1ガソリン車は、ガソリンを給油してエンジンで走るため、排気ガスやCO2を排出する。一方、電気自動車は、家庭で充電でき、モーターで走る。(はりつけ)その結果、走行中のCO2の排出はゼロ。火力発電などで電気をつくるプロセス全体でも、ガソリン車に比べて1/4の排出ですむ。またエネルギーコストも安く、ガソリン車に比べて、1/4-1/13(深夜電力)。性能も加速が良く、静か。

(アナ)

課題はないのか?

(むろ)

(はりつけ)いろいろある。ひとつは「走行距離が短い」ということ。今回の電気自動車ではバッテリーを満タンにして走行できる距離は、90-160km。160km総公のタイプでも、エアコンを使うと100kmまで減ってくる。同型のガソリン車で670km走行なので、電気自動車の走行可能距離は1/4くらい。まだバッテリーの性能が、長距離走行まで進化していない。

(アナ)

対策は?

(むろ)

まずは「バッテリーの改良」。しかし使い方でクリアできる方法も工夫されつつある。

(はりつけ)たとえば、「急速充電できる施設」をつくり、充電時間を20-30分と短くする。そして街のあちこちに施設を建設する。現在全国で50箇所ほどあるが、まだまだ少なく、今後増やす必要がある。その他、バッテリーが空になった時、万反のバッテリーと交換してしまうシステムを考えている企業もある。しかしまだまだ課題が残っているといえる。

(アナ)

価格はどうか?

(むろ)(はりつけ)まだ高い。今回発売の一方ので他を見ると、一台460万円。国と自治体の補助金を使って、250万円ほどで購入できる地域もあるが、同型が146万円だというのと比較すると、まだまだ高い。今後増産してコストダウンすることを期待する。

(アナ)

電気自動車の可能性とは?

(むろ)

(はりつけ)電気自動車は「車を超える車」。少ない部品で作れるため、新規産業の参入が起きやすく、自動車も多様化していく。(はりつけ)また自宅の太陽光発電と接続すると、CO2排出ゼロのエコが実現できる。さらに災害時には、電気自動車のバッテリーの電気を家庭用に使用できるなど、利点も多い。(はりつけ)電気自動車は、社会へインパクトをあたえる車と言える。上手に育って、発展していってほしいものだ。

(アナ)

ありがとう。

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放送のお知らせ

7/2(木)の出演予定をお知らせします。いずれもNHK総合テレビです。

スタジオパーク~ここまできた!電気自動車」(13.40過ぎから7分間生放送)

大人ドリル~地球温暖化」(23.00-23.30)(タレントの加藤浩次さんと渡辺満里奈さんの司会で、3人の解説委員がフリーディスカッション。温暖化について意外に知られていない話を、クイズを交えてトークします。http://www.nhk.or.jp/kaisetsu/

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